ライフ

加工肉の添加物 やり玉に挙げられるがすべてが悪者じゃない

加工肉の添加物には必要なものも

 市販の加工肉にある添加物を嫌う人も多いだろう。だがそんなに「悪者」なのだろうか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。

 * * *
 このところ自家製の加工肉を提供する飲食店が増えている。フランスで言う「シャルキュトリー」やドイツ語での「メッツゲライ」というようなハムやソーセージを扱う食肉店だ。人気の理由に「添加物や保存料の少なさ」を挙げる人も少なくない。こうした工房で作られる加工肉は何が違うのだろうか。専門店の店主はこう語る。

「例えば大手メーカーのハムのラベルを見ると、大豆たんぱく、卵たんぱく、ゼラチン、ポークエキス、たんぱく加水分解物、ソルビン酸カリウム、増粘剤など添加物のオンパレード。もちろん添加物のなかには、保存などのために必要なものもあるはずですが、たんぱく質やゼラチンの添加などは、水分を加えて文字通り分量を水増しするためのものです。個人に近いようなスケールでやっている店は、比較的添加物が少ない傾向はあると思います」(食肉加工店店主)

 もっともすべての添加物が悪者だとは限らない。

「例えばソルビン酸カリウムは、よく『保存料が!』とやり玉に挙げられがちですが、添加しなければ、保存性は格段に下がって腐りやすくなる。大手の製品を買う人のなかには、常温で保存するような人もいるでしょうし、消費期限をもうけているとはいえ、私が大手メーカーに勤めていたらやはり入れたくなると思います(笑)」(同)

 また、亜硝酸ナトリウムは、国内では『発色剤』という扱いだが、猛毒のボツリヌス菌に対する制菌効果を狙って加えているケースが多いという。ボツリヌス菌といえば、いまから30年前、熊本県のメーカーが製造した辛子蓮根で集団食中毒事件が発生。数十名が中毒症状に陥り、11名の死者を出した事件の原因菌でもある。

「結局、何のリスクを取るかというバランスの話です。冷蔵庫保存もせずに消費期限を過ぎたものを召し上がられても、メーカーは責任なんて取れません。加工肉でもきちんと保存して一定の期間内で食べきれば、まず問題なんて起きないですよ。最近は自宅でハムやソーセージなどを作られる方も増えた印象がありますが、たいていは最低限の勉強をされて作っている。そういう方から『こないだ当たっちゃって』なんて話は聞いたことがありません。

 知り合いの大手メーカーの人に聞いたところでは、クレーマーに限って、買った後の保存に問題があるケースが多いようなんです。なかには常温保存しておいて、『添加物が悪い』と怒鳴りこんでくるという信じられないケースまであるようで……」(同)

 食べ物は腐る。当たり前の話だ。だがその当たり前の話が通用しない人が世の中にはいるらしい。

関連記事

トピックス

伊藤沙莉は商店街でも顔を知られた人物だったという(写真/AFP=時事)
【芸歴20年で掴んだ朝ドラ主演】伊藤沙莉、不遇のバイト時代に都内商店街で見せていた“苦悩の表情”と、そこで覚えた“大人の味”
週刊ポスト
総理といえど有力な対立候補が立てば大きく票を減らしそうな状況(時事通信フォト)
【闇パーティー疑惑に説明ゼロ】岸田文雄・首相、選挙地盤は強固でも“有力対立候補が立てば大きく票を減らしそう”な状況
週刊ポスト
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
新アルバム発売の倖田來未 “進化した歌声”と“脱がないセクシー”で魅せる新しい自分
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大ヒット中の映画『4月になれば彼女は』
『四月になれば彼女は』主演の佐藤健が見せた「座長」としての覚悟 スタッフを感動させた「極寒の海でのサプライズ」
NEWSポストセブン
中国「抗日作品」多数出演の井上朋子さん
中国「抗日作品」多数出演の日本人女優・井上朋子さん告白 現地の芸能界は「強烈な縁故社会」女優が事務所社長に露骨な誘いも
NEWSポストセブン
国が認めた初めての“女ヤクザ”西村まこさん
犬の糞を焼きそばパンに…悪魔の子と呼ばれた少女時代 裏社会史上初の女暴力団員が350万円で売りつけた女性の末路【ヤクザ博士インタビュー】
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏による名物座談会
【江本孟紀×中畑清×達川光男 順位予想やり直し座談会】「サトテル、変わってないぞ!」「筒香は巨人に欲しかった」言いたい放題の120分
週刊ポスト
大谷翔平
大谷翔平、ハワイの25億円別荘購入に心配の声多数 “お金がらみ”で繰り返される「水原容疑者の悪しき影響」
NEWSポストセブン
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
【全文公開】中森明菜が活動再開 実兄が告白「病床の父の状況を伝えたい」「独立した今なら話ができるかも」、再会を願う家族の切実な思い
女性セブン
伊藤
【『虎に翼』が好発進】伊藤沙莉“父が蒸発して一家離散”からの逆転 演技レッスン未経験での“初めての現場”で遺憾なく才能を発揮
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン