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日本の多機能トイレ 技術世界一でも苦戦の理由を評論家解説

トイレを考える企画展が大人気(日本科学未来館にて)

 日本が世界に誇る最先端商品として真っ先に名前が挙がるトイレ。いまや、TOTOの「ウォシュレット」に代表される温水洗浄便座でなければ用を足せないという人も多いだろう。

 そんなトイレの目覚ましい進化の過程から、排泄物と地球環境の問題に至るまで幅広く知ることができる企画展「トイレ?行っトイレ!~ボクらのうんちと地球のみらい」(東京・江東区の日本科学未来館にて10月5日まで開催)が盛況を博している。特別協賛には住宅設備機器業界大手のLIXILが名を連ねた。

 7月2日から始まった同展は、8月15日までになんと10万人が訪れ、9月に入ってからも休日は家族連れなどで行列ができるほど。巨大なトイレのすべり台を“滑降”して下水道の処理方法が学べるなど、年齢を問わず「うんちの気持ちになれる」と好評だ。

 いま改めてトイレが注目されているのはなぜか。全国各地のトイレを取材し、“トイレハンター”の異名も取るマリトモさんが語る。

「トイレは誰もが1日に何度も利用する非常に重要な場所であり、忙しい世の中で唯一ひとりきりになれる究極のプライベート空間です。にもかかわらず、<臭い><汚い>とのイメージが先行しがちで、日頃トイレに関心を持つことはほとんどありません。

 今回の企画展が人気になっているのは、トイレのマイナスイメージを払拭し、他人事ではない身近な問題に改めて向き合おうという前向きな気持ちの表れなのかもしれません」

 では、現在の日本のトイレ市場はどうなっているのか。

 市場調査会社の富士経済によれば、洋式の温水洗浄便座、便器とタンクがひとつになった一体型温水洗浄便器を合わせた国内市場は、年間約425万台、1557億円(2013年見通し)で拡大基調となっている。増税前の駆け込み需要や景気回復も追い風に、新築やリフォーム向けに新しいトイレを装備する家庭が増えているという。

 水洗便器の販売シェアは前出の上位2社の寡占状態が続いている。

「温水洗浄便座も一体型もTOTOとLIXILで市場全体の8割を握っている。TOTOはオフィスビルなど法人に強く、LIXILは家庭向けで浸透しているイメージ」(住宅設備メーカー)

 最新型トイレの技術開発も2社がしのぎを削りながら、いまなお進化を遂げている。

「近年トレンドとなっていたのはタンクレストイレの普及など節水性の向上でしたが、2大メーカーは難なくクリア。いまは少ない洗浄水量でも鉢内の汚れをしっかり落とす清掃機能の向上や、除菌やカビ予防など清潔に保つことができる機能を強化しています。

 しかし、両社とも苦戦しているのは海外への売り込み。日本のトイレは他国では真似できない高性能を誇りながら、地域特性や国民性を踏まえた市場開拓といった点ではまだまだなのです」(住宅専門誌記者)

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