剣にこだわる滝田だけに、時代劇の殺陣も本物志向を貫く。『必殺スペシャル』に相次いで出演した際やNHK『巌流島 小次郎と武蔵』での宮本武蔵役などでの殺陣は圧巻の迫力だった。
「やっぱり、通り一遍の立ち回りじゃ面白くない。『必殺』は京都で撮影しましたが、型も決まっていて他のことをやらせてくれない。ですから、もし実戦的なのをやらせてくれるなら、という条件で出ました。
実戦の刀を使える殺陣師と一緒に京都に行きまして。京都だと殺陣師が現場に来てその場で手をつけて終わりなのですが、この時は何時間も前に集まってもらって、みんなで稽古してから本番に臨みました。京都の人たちは最初は嫌がりましたが、『変化していかないと飽きられる』と一生懸命に話して納得してもらったんです。
武蔵の時も『本気の立ち回りをやらせてくれるなら、やるよ』ということで出ました。二刀流も、大刀と小刀で斬る時の真剣刀法でやりました。それから、最後に小次郎にとどめを刺す舟の櫂も、自分で本物の櫂を削って、家で練習しました。
(渡辺)謙ちゃんが小次郎でしたが、本物の櫂で寸止めしています。羽二重に触れるところまで行かないとカメラでバレちゃうんです。ただ自信はあるけど、怖かった。それで一回目はほんの少し隙間が空いちゃうんです。でも、演出家も人の気も知らずに触れてくれと言う。殺陣師も『大丈夫だ』って。それで思い切り振り降ろしました」
●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)、『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)ほか。最新刊『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書)も発売中。
※週刊ポスト2014年10月3日号