芸能

田中康夫氏 「携帯電話やメールの登場で考える葦が退化した」

 1980年に文藝賞を受賞、翌年1月に出版され大ベストセラーになった、作家・田中康夫氏の『なんとなく、クリスタル』。33年経った今年11月末、続編が発売される。その名も『33年後の、なんとなくクリスタル』。

≪当時は全国津々浦々で真っ当に働き・学び・暮らす老いも若きも、それぞれに夢や希望をいだいていたのだ。パステルカラーに彩られた“一億総中流社会ニッポン”の一員として≫…同書にはこんな一節がある。

「昔はカフェならぬ喫茶店でも、電話を取り次いでくれる所を待ち合わせ場所に選んだ。ハチ公前で待ち合わせした相手が遅れると、交通事故にでも遭ったんじゃないかと気をもんだもの。携帯電話やメールの登場でそんな心配はなくなった。でも、逆にその分、相手の気持ちや状況を想像する“考える葦”が退化しちゃったかも」と田中氏は言う。

 音楽も同じ。かつて彼女や彼の部屋で、ドライブする車の中で、恋人たちが親密さを増すのに一役かっていた音楽は、いまやスマホにダウンロードしてイヤフォンで聴くものになって、人との関係を遮断している。

「会話を楽しむための触媒としての音楽が、逆にコミュニケーションを断ち切る装置になってしまい、ネット上でも一方通行の言いっ放しばかり。便利になったはずなのに殺伐としてしまった。だからこそ、人の顔が見える、体温を感じられる社会のあり方を、みなが問い直しているのだと思います」(田中氏)

※女性セブン2014年11月20日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/小倉雄一郎)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
池田被告と事故現場
《飲酒運転で19歳の女性受験生が死亡》懲役12年に遺族は「短すぎる…」容疑者男性(35)は「学校で目立つ存在」「BARでマジック披露」父親が語っていた“息子の素顔”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン