ホンダ車の品質に関する信頼が大きく揺らいでいる――。
発端は昨年9月以降に投入したハイブリッド車(HV)の基幹システムで立て続けにリコール(回収・無償修理)を発表したことにある。その回数が看板車種「フィット」で5回、小型SUVの「ヴェゼル」で3回と同一車種で尋常ではない頻度だったために、さすがに国交省から「不具合が多すぎる」と再発防止を指導された。
さらに、追い打ちをかけたのが、ホンダ車の多くに搭載されているタカタ製エアバックの欠陥問題である。米国では消費者による集団訴訟も起こされ、完成車メーカーとしてホンダの責任も厳しく問われている。
11月24日には、アメリカ運輸省に届け出を義務づけられていた事故のうち、2003年から今年にかけて1729件もの報告漏れがあったことを明らかにするなど、ホンダのブランドイメージは海外でも悪化する一方だ。
ホンダ社内では、伊東孝紳社長ら経営陣が役員報酬の一部を返上して対応にあたり、“ミスタークオリティ”と呼ばれる役員を専任させるなど品質改善策にも取り組んでいる。だが、歴代の社長経験者が伊東氏に苦言を呈しているとの報道まで飛び出すなど、品質管理の甘さに対する疑問の声はなかなか収まらない。
もともと技術開発のレベルの高さには定評のあったホンダが、どうしてこんな失態を繰り返す事態に陥ってしまったのか。経済ジャーナリストの福田俊之氏は、「ある種の大企業病に罹っている」と語り、こう続ける。
「ホンダイズムの原点は、ヤンチャで気骨ある技術者が他メーカーのモノマネではないクルマを次々と開発し、斬新さや高品質で勝負するというもの。そんなチャレンジ精神が会社の規模拡大とともに薄れ、気が付けば薄利でもたくさん売れる軽自動車や小型車ばかりを作るメーカーになってしまいました。
リーマンショック後に就任した伊東社長も、販売台数を追う経営に終始。開発期間の短縮やその他のコスト削減にも取り組んできましたが、軽自動車の熾烈な競争などに遭い、目標台数に届かないばかりか、手薄になった技術力でもリコールというしっぺ返しを食らう結果になってしまいました」(福田氏)
10月28日に発表された中間決算では、度重なるリコールで新車販売計画に遅れが生じたことも響き、国内販売目標を103万台から10万台引き下げ、世界販売も490万台から469万台に下方修正した。
「このままリコールによる国内販売の低迷と、“ドル箱市場”の米国でタカタ問題が長引けば、さらなる販売減も避けられない」(自動車アナリスト)
との指摘もある中、ホンダは11月に高級車「レジェンド」を発表したのに続き、来春までに5車種の新型車を矢継ぎ早に出して巻き返しを狙う。「今の危機的な状況を脱するには、新型車の品質をアピールしてクリーンヒットを飛ばすしかない」(前出・福田氏)のが至上命題だ。