ライフ

【書評】教え子への性関係強要を「恋愛」だと思い込む愚かさ

【書評】『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は 繰り返されるのか』池谷孝司著/幻冬舎/本体1400円+税

池谷孝司(いけたに・たかし):1988年共同通信社入社。2014年7月から宮崎支局長。著書に『死刑でいいです 孤立が生んだ二つの殺人』(編著、新潮文庫)、『ルポ 子どもの貧困連鎖 教育現場のSOSを追って』(共著、光文社刊)など。

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 本書を読んで強く感じるのは、被害を受けた女子生徒の心の傷の深さと同時に、加害者である男性教師の心の弱さ、未熟さ、愚かさである。

 性的ないやがらせ発言から強姦に至るまで、学校で起きる性被害を総称して〈スクールセクハラ〉と呼ぶ。ここ数年、わいせつ行為で停職や懲戒免職に処せられた公立小中高校の教師は年間百数十名から二百名近くで、被害者は教え子が半数だという。

 だが、その数字は氷山の一角に過ぎないようだ。本書も指摘するように、スクールセクハラは密室での出来事ゆえに発覚しにくく、生徒が訴えても教師は否定し、学校は体罰やイジメ以上に隠蔽したがるからだ。

 本書は、男性教師から女子生徒へのスクールセクハラのケースをいくつか詳細にルポしている。被害者とその家族だけでなく、加害者も取材した点が優れている。

 ひとつ目は、妻のいる中年教師が高校生の教え子と性的関係を持ったケース。教師は進路指導の場で生徒に自分の個人的な悩みを打ち明け、ストレス解消のためと称して生徒をカラオケに誘う。そして、内申書の点を握られている弱みや自分が特別扱いされた優越感からつい応じてしまった生徒を車でラブホテルに連れ込み、押し倒す。

 その後は大学進学への影響力をちらつかせ、関係を継続させた。生徒は遠方の大学に進学して教師から逃げたが、自尊心を傷つけられて自己評価が低くなり、摂食障害に悩むなど苦しみ続けた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト