もちろん、原則としてホスト国が立ち位置を決める以上、良いポジションが取れないこともあるだろう。しかし、安倍首相は2013年10月にインドネシア・バリで開かれたAPEC首脳会議でも後列の隅のほうに追いやられている。野田佳彦・前首相がハワイ開催の同会議でオバマ大統領の隣という絶好の地位を得ていたことに比べると、その差は歴然である。安倍政権があれだけ否定していた民主党政権時代よりも、集合写真上の日本の存在感は低下しているのが現実なのだ。天木氏が続ける。

「かつて中曽根康弘首相は、歩きながら無理矢理にでもレーガンやサッチャーの横に行って話したり、集合写真でも半ば強引に中央付近を取りに行ったりしました。ところが今回の会議では、習近平がオバマやプーチンと談笑しながら入場する後ろから、安倍首相は静かに入ってくるだけ。

 11月に行なわれたG20でも、ランチのときに安倍首相が自ら自分のグラスに水を注ぐ光景が映されていた。たとえランチでも、どこに座るか、誰と話すか、これらは全て外交なんです。こうした情けない姿が世界に晒されるのは大きなマイナスです。外務省もなぜアドバイスしないのでしょうか」

 国際情勢が激変するなか、政権が外交戦略に苦慮する様子はよく分かる。しかしだからといって、日本の存在感を水増しすることは、それこそ日本の孤立化につながるだろう。

※SAPIO2015年1月号

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