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読了したら最初に戻り読み返す無限運動突入の『手紙物語』

【マンガ紹介】『手紙物語』鳥野しの/祥伝社/734円

 この一冊で、世界中を旅してしまおう。時空すら超えて。

 鳥野しの『手紙物語』は、実に多彩な短編集です。「手紙をめぐる物語」というテーマで全体が貫かれていますが、SF、歴史ロマン、昭和人情譚にファンタジーと1作ごとにテイストががらりと変わり、豪華絢爛。飽きることがありません。

 たとえば収録作「白き使者」の舞台は16世紀イングランド。主人公は、不遇の姫エリザベスに秘密の手紙を届けようと奮闘する使者です。敵を前に、マントを翻し華麗に立ち回るおかっぱ頭の彼。そのひとつひとつの動作の素敵なこと! 俊敏な動きとかわいらしさを同時に表現する絵の魅力にぐいぐい引き込まれます。くすっと笑えるどんでん返しもあり、クリスマスのプレゼントのように心温まる一編です。

「シュレディンガーの恋人」ではうってかわり、緊張感溢れるミステリーが展開されます。人気作家グローヴナーが遺した最後の手紙のオークション。「最愛のHへ」と宛名書きされた封書を手に入れようと、生前彼と関係のあった女性たちが一堂に会します。そんな中、ミステリー愛好家の小間使いエミリーは手紙に隠された真実にじわじわ迫り…!?

 本作の見どころは、なんといっても心理戦を盛り上げるキャラクターたちの表情。特にラスト5ページ、人生の喜びと切なさがにじむ複雑な表情は圧巻! 最後まで読んだらもう一度最初に戻って読み返す。そんな無限運動に突入してしまうはず。

 美しいコスチュームも、ハラハラするアクションも、繊細な心理描写も。欲ばりな読者にこそオススメしたい愛すべき作品集です。

(文/横井周子)

※女性セブン2014年12月18日号

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