芸能

坂本冬美 紅白出場26回でも「うまく歌えたこと一度もない」

坂本冬美が語る紅白の独特の緊張感

 NHK紅白歌合戦の出場回数26回を誇る演歌歌手・坂本冬美。紅白は坂本にとって歌手を目指すきっかけだった。石川さゆりが1977年の紅白で絶唱した『津軽海峡・冬景色』にしびれ、子供の頃からのプロの歌手になりたいという漠然とした夢が決意に変わったという。10歳の時だ。

 1988年に初出場。「苦節するもの」と覚悟していたのにデビュー2年目で大願成就した。決定の知らせは地方に向かう新幹線の中だった。恩師・猪俣公章氏(作曲家、作詞家)と両親にすぐに電話。帰京後、恩師宅に報告に行った際に語気強く言われた言葉がある。

「本番で泣くな。泣いたら歌にならなくなるからな」

 以後、この「泣くな」という言葉をずっと肝に銘じ続けてきたという。

 初歌唱曲は『祝い酒』だった。1988年の12月は昭和天皇の容体が心配され、歌舞音曲が自粛される動きがあったが、政府が自粛不要の判断を示し歌うことになった。坂本が振り返る。

「いざ出番の時、憧れのさゆりさんがポンと背中を叩いてくれて、かえって緊張してしまいました。なんとか先生の言葉通り泣かずに歌ったんですが、袖に戻った途端号泣してしまいましたね。すると次の出番の方までつられて号泣しちゃって(笑い)。先生は自宅のTVの前でヨシヨシっていいながら涙ぐんでいたことを後から聞きました」

 出場26回は、今回の紅組出場者では和田アキ子、石川に次ぐ。しかし「うまく歌えたことは一度もない」「回を重ねるごとに緊張感が増した」と紅白特有の緊張感を口にする。一昨年には『夜桜お七』の歌詞をド忘れしてしまった。

「まだ一番なのに二番の歌詞に行ってしまった。何百回、何千回、何万回も歌ってきて、そんな間違え方は一度もなかったのに。でも歌うのを止めなかったことはよかった」

◆さかもと・ふゆみ/1967年、和歌山県生まれ。1987年に『あばれ太鼓』でデビュー。1988年、『祝い酒』で紅白歌合戦に初出場。

●文・石山裕(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2014年12月26日号

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