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カレンダー業界は松岡修造が軸 秀逸ビジネスモデルの由来は

 もう新年のカレンダーの用意をすました家庭は多いだろうか。まだなら「日めくりカレンダー」をお勧めしよう。コラムニスト・オバタカズユキ氏が、今話題の爆笑日めくりカレンダーから、カレンダー業界を解説する。

 * * *
 この忙しない年末に、松岡修造が売れまくっているそうだ。報道によると、日めくりカレンダー『まいにち、修造!』(1080円税込・PHP研究所)が、39万部の発行部数に到達。カレンダー業界的にも異例のバカ売れで、まだまだ増刷が期待できるという。

 とある老舗出版社の収益の柱は実を言うとカレンダー、と聞いたことがある。カレンダービジネスは出版界において知る人ぞ知る心強い副業だったりするわけだが、本業のビジネス書出版が市場全体のシュリンクで苦しい感じだったPHPも、これでだいぶ救われたはずだ。ひとまず、同じ業界で飯を食う者として喜ばしいニュースだ。

 でも、要は松岡修造の名言を集めたカレンダー。それがどうしてそこまで売れるのか。いまいち分からないと思いながら、中身をチェックしてみると、これが予想を上回る爆笑力で爆発している感じなのだ。

 たとえば、こんな名言のページがある。初見は何のことやら意味不明。

〈05 自分を持ちたいなら、サバになれ!〉

 なんだそれと説明文を読んでみると、こんなことが書いてある。

〈何となく周りに流されてしまう自分がイヤで、ネチネチ悩んでいるのか?サバを見てみろよ。いろんな魚が泳いでいる所でも、周りを気にせず、常にサバサバしているだろ(後略)〉

 なんだダジャレかよ、なのだが、そう思うと同時にこみあげてくるものがある。「サバを見てみろよ!」と熱く語りかけてくる松岡修造を脳裏に浮かべてみたい。「サバサバしているだろ!」と心から言い切る松岡修造の顔もだ。「たしかにそうですね!(爆)」となるしかないではないか。

 ちなみに、このサバのページでは、手足をまっすぐ棒状に伸ばした松岡修造が波の上でバタ足をしている写真つきである。ウケる、笑える、元気になる、という評判は耳にしていたが、実際のところウワサ通りに面白い。以下、私が思わず吹き出しそうになった名言のページを3例ほど記しておこう。

〈07 今日からキミは噴水だ!〉
……イチョウ型の噴水デザインの上で喜怒哀楽をあらわにした松岡修造のいくつかの顔写真が水玉になって飛び散っている。

〈13 不平や不満は、心を後ろ向きにさせるポイズン〉
……半袖半ズボンの松岡修造が両腕を開く抗議のジェスチャーで口から吐き出しそうな何かを必死に堪える頬っぺた膨らまし顔のまま前進してくる。

〈26 脳がブルブル震えて喜んでいるよ!〉
……目鼻口をまん丸にした仰天顔の松岡修造が自分の頭部をパンパンに膨らませた風船を両手で包むみたいな格好をしている。

 写真やデザインの面白さを言語化するのはなかなか難しいから画像検索などで現物を見てほしいのだが、名言の意味はまあそういうことだ。特に深い意味はなくても、松岡修造が本気で発するから笑いの価値が生まれるのだ。

 これは買いだろう、と私も思った。ところが、ネットストアの購入ボタンをクリックする手前で気がついた。日めくりなのに名言が31しかない。

 そう、上記した事例の頭にそれぞれついている数字で気づいた方もいるかと思うが、名言ページは01~31のみであり、1月分をめくったら、また01に戻りましょうという仕組みなのである。どうりで日めくりなのに値段が安いわけだ。

 このなんとも上出来なビジネスモデルをとっくの昔から導入している巨匠の日めくりカレンダーがある。全31ページの相田みつを『こころの暦 にんげんだもの』(923円税込み・三和技研)。1~31の数字と共に、1ページに1ポエム、巨匠の毛筆書きが印刷されている仕組みだ。松岡修造カレンダーの企画担当者は、みつをカレンダーをベースに商品開発したに違いない。

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