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天皇陛下は新年、もっとも丁重な作法で神々への崇敬を表す

 かつて国家的行事だった宮中祭祀は、戦後、「天皇家の私的行事」とされ、国民に知られることはほぼなくなった。しかし、森深い皇居の奥では、神聖かつ神秘的な祭祀が昔と変わらぬまま連綿と続いている。正月といえば、新年の一般参賀くらいしか思い浮かばないかもしれないが、天皇陛下は元旦から休まれることはない。祭祀を通じて神々への感謝と国家国民の安寧を祈る天皇陛下の祈りは深い。

 宮中祭祀の一年は元日の朝、夜も明けきらぬ早朝から始まる。黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう=平安時代に定められた天皇のための束帯装束)姿の天皇陛下が神嘉殿の前庭に降り立たれ、屏風で四方を囲まれた御遥拝所(ごようはいじょ)に入る。そこで行なわれる儀式が「四方拝」(しほうはい)だ。天皇陛下はまず伊勢の方角(皇祖・天照大神)に、次いで東南西北の順に、「両段再拝」で拝礼される。

 その作法は神拝のうち最も丁重なものだ。笏(しゃく)を右手に持ち正座姿勢から右足より立ち、両足をそろえ、両手で笏頭を目の高さまで掲げ、腰を折って深々と頭を下げながら、左足から正座に戻り、そのままうつ伏せられる(一連の動作を起拝と呼ぶ)。起拝を二度繰り返した後、深く頭を下げる。その後さらに、起拝を二度繰り返す。前段と後段で二回ずつ、合わせて四回起拝を行なうから「両段再拝」なのだ。天皇陛下のご拝礼は常にこの丁重な作法による。

【暦の凡例】
日付
祭祀・行事名
概要 
出御・お出まし

1月1日
【四方拝】
午前5時半に天皇が黄櫨染御袍で神嘉殿の前庭にて伊勢の神宮、山陵及び四方の神々を遥拝する年初の行事。平安時代に始められた。
天皇

【歳旦祭(さいたんさい)】
四方拝の後、宮中三殿で皇祖・皇霊・天神地祇(てんじんちぎ)をまつり五穀豊穣・国民安寧を祈る年始の祭典。2日、3日も掌典職による奉仕がある。
天皇 皇太子

1月3日
【元始祭(げんしさい)】
年始に皇位の大本と由来とを祝し、国家国民の繁栄を三殿で祈る。
天皇・皇后 皇太子・同妃 各宮家の皇族

1月4日
【奏事始(そうじはじめ)】
宮殿鳳凰の間で掌典長が前年の伊勢の神宮及び皇室の祭祀のことを天皇に申し上げる行事。
天皇

1月7日
【昭和天皇祭】
昭和天皇の崩御(ほうぎょ)された日に皇霊殿で執り行なわれる(武蔵野陵〔むさしののみささぎ〕においても祭典がある)。夜には御神楽(みかぐら)が奏される。
天皇・皇后 皇太子・同妃 各宮家の皇族

1月30日
【孝明天皇例祭(こうめいてんのうれいさい)】
孝明天皇の崩御された日に皇霊殿で執り行なわれる(後月輪東山陵〔のちのつきのわのひがしやまのみささぎ〕においても祭典がある)。夜には御神楽が奏される。
天皇・皇后 皇太子・同妃 各宮家の皇族
 
※SAPIO2015年2月号

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