ライフ

日本の肉料理レシピ この10年間で大幅にアップデートされた

 明治に庶民に肉食文化が解放されて100年、外食から食卓へ、日本の肉食文化はさらに洗練の時期を迎えている。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が語る。

 * * *
 この10年、外食における「肉」の存在感は大きくなる一方だ。2001年のBSE騒動で焼肉店やステーキ店が大打撃を受けたのがウソのように、外食における日本の肉食文化はV字回復した。いや、さらに進化したと言ってもいい。

 かたまり肉と言えばオーブンで数十分加熱したものを薄切りにしたローストビーフしかなかったのが、焼きの技法もカットの様態も多彩になった。あるいは特定の地域でしか味わえなかったメニューが、他地域でも楽しめるようにもなった。

 関西で親しまれていた「ビフカツ」など少し前まで首都圏でもほとんど見なかったメニューが、現在では全国の洋食店へと広がりを見せている。定番のステーキにしても超高級店から立ち食い店までその業態は百花繚乱。外食における「肉の選択肢」は驚くほど増えた。

 そうした肉ブームがようやく家庭の食卓にも届き始めている。象徴的なのは、昨年秋頃から肉に特化したレシピ本が怒涛の発売ラッシュを迎えていることだ。

 ざっと挙げてみても、『日本一の肉レシピ』(プレジデントムックdancyu)、『THE 肉レシピ』(レタスクラブMOOK)、『本気の肉レシピ』平野由希子(ぴあMOOK)などが10月から12月の間に発売されている。

 いずれの本にも共通するのは、牛のステーキのような家庭「でも」調理されていたメニューの見直しだ。焼き加減や手順など正解が曖昧だったものが、外食における肉ブームで大量の知見と考察が蓄積された。

 とりわけかたまり肉については、この10年ほどで膨大な知見が新たに積み上げられた。そこから絞り出されたエッセンスが家庭の肉レシピのアップデートを促した。同時期に刊行された拙著、『大人の肉ドリル』(マガジンハウス)でもレシピに加えて、手順の意味や理由を科学論文などから考察している。

 霜降り黒毛和牛ばかりがもてはやされる時代を越えて、日本の肉食文化は多様性を獲得した。黒毛和牛一神教時代からBSE騒動を経て米国産牛、豪州産牛の味を知った。国産牛へ回帰した後にはいいホルモンの味を知り、霜降りではない赤身肉も脚光を浴びるようになった。

 赤身の味わいが濃厚な短角牛や、押しつけがましくない旨味の褐毛和牛など、「和牛」の多様性も認識されるようになった。黒毛和牛×ホルスタインの交雑種のほか、最近では乳牛用だと思われていたホルスタインやブラウンスイス種の肉も手に入る。

関連記事

トピックス

俳優の水上恒司が真剣交際していることがわかった
水上恒司(26)『中学聖日記』から7年…マギー似美女と“庶民派スーパーデート” 取材に「はい、お付き合いしてます」とコメント
NEWSポストセブン
ラオスに滞在中の天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《ラオスの民族衣装も》愛子さま、動きやすいパンツスタイルでご視察 現地に寄り添うお気持ちあふれるコーデ
NEWSポストセブン
AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト