ライフ

末期がん闘病22才山下弘子さん「80才まで生きると信じる」

 19才という若さで余命半年と宣告され、闘病記『雨上がりに咲く向日葵のように』(宝島社刊)を出版した山下弘子さん(22才)。ベリーショートがよく似合い、明るく快活に話す弘子さんは一見どこにでもいそうな今どきの22才の女性。だが、弘子さんは2年半前の2012年秋、19才の時に肝臓がんが見つかった。

 手術は成功し抗がん剤治療がスタートしたが、芳しい結果は出ず肝臓がんは再々発。治療と再発を繰り返す日々が続いた。弘子さんの転機は、高校時代の恩師からの「講演をしないか?」という誘いだった。

「先生は私にある乳がん患者のかたが書いた闘病記を渡してくれました。『いつか私も闘病記書いてみようかな~』と軽い気持ちで言ったら、『じゃあ、まずはうちの高校で講演してみたら?』と。“がんの経験を社会のために生かすいいチャンスかもしれない”と思って引き受けることにしたのです」(弘子さん・以下「」内同)

 講演を始めるのと時同じくして、弘子さんはフェイスブックやブログでがん治療や講演、日々の生活について情報発信を開始した。そうした活動が話題になり、講演の他にテレビ番組からインタビュー取材を受けるようになる。ところが、「社会のために自分の経験を伝えたい」という思いで活動を続ける弘子さんを次なる試練が襲った。それはネット社会からの誹謗中傷だった。

「私のブログを見て『生きる勇気が湧いた』といった感想をくれるかたがいて、“私のがんにも意味があった”“誰かの役に立てる”そう思っていたのですが、ネットの掲示板やブログのコメントに『余命宣告ビジネス』、『死ぬ死ぬ詐欺』などと書かれるようになりました。

 私は、がんの再発が見つかってから『いつ死ぬかわからないから自分のやりたいことをやろう!』と決めて海外旅行に行くこともあったのですが、『病人ならおとなしく治療に専念すれば?』なんて言われることもありました。そんなことが多くなって、“こんな社会のために頑張る必要があるのか”とイヤになり、この時にアプローチがあった取材依頼はすべてお断りしていたんです」

 落ち込む弘子さんに浮かんだのは聖書にある「自分を愛するように、隣人を愛せよ」という言葉だった。

「この言葉には“隣人を愛する前にまず自分を愛しなさい”という意味が込められています。私は今まで、“やってあげているのに”という見返りを求める気持ちがあったんです。でも、そうじゃない。誰かのためではなく自分のために伝え続けていこうと思ったんです」

 そうして現在もがん治療を続けながら講演、仕事を精力的にこなす。昨年末にはがんが発覚して以降、これまでの生活を記した著書『雨上がりに咲く向日葵のように』を出版した。

 昨年、弘子さんは休学していた大学に退学届を出した。現在は母親の会社で経理として働きながら、株の運用を開始。「自立できるくらいの収入を得られるようになってきた」という。

「私の体にはまだいくつものがんがあり、治療では強い副作用が出てしまうこともあります。去年の春は、抗がん剤の副作用で全身が真っ赤に腫れ上がり発疹が出ました。痒くて痒くてたまらなく、全身が焼けるように熱い。それで氷枕や氷を入れた袋を体中に貼りつけるのですが、今度は体温が下がりすぎて震えてしまう。眠ることもできず地獄のようなつらさでした。でも、そうしたリスクがあっても治療に挑み続けるのは、がんと“共生”していくためです。

 余命半年といわれながら、私は今こうして元気に暮らしています。手術を重ねるたび“目の前の壁を越えれば奇跡がある”と強く思い込みます。私はただがんを持っているというだけ。友人と恋バナもするし、仕事の悩みも相談し合う。私が生きているだけで、家族は涙が出るほど喜んでくれます。私が元気で笑っていることが最大の親孝行なのです。私は99%、80才まで生き続けると信じています」

※女性セブン2015年2月12日号

関連記事

トピックス

《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
30年来の親友・ヒロミが語る木梨憲武「ノリちゃんはスターっていう自覚がない。そこは昔もいまも変わらない」
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平の通訳・水原一平氏以外にもメジャーリーグ周りでは過去に賭博関連の騒動も
M・ジョーダン、P・ローズ、琴光喜、バド桃田…アスリートはなぜ賭博にハマるのか 元巨人・笠原将生氏が語る「勝負事でしか得られない快楽を求めた」」
女性セブン
”令和の百恵ちゃん”とも呼ばれている河合優実
『不適切にもほどがある!』河合優実は「偏差値68」「父は医師」のエリート 喫煙シーンが自然すぎた理由
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン