【燃費】
ユーザーにとってクルマの購入を決めるもっとも大きな要素となるのが「燃費」だろう。前出の岩谷産業や石油元売り最大手のJX日鉱日石エネルギー、東京ガスなど水素供給を行う各社は1kgあたり1000~1100円の燃料価格を設定している。
MIRAIは水素5kgのフル充填で約700km走るとされているので、FCVに換算すると1kmが8円前後で走れる計算になる。だが、昨今続く原油安で水素燃料の価格メリットが打ち出しにくい状況になっている。
直近のガソリン価格は1リットルあたり136.2円まで下がっていることを考えると、FCVの燃費はリッター17.2kmのガソリン車に相当する。
「20年前だったらガソリン車に比べてFCVのエネルギー効率は格段にいいと言えましたが、いまはガソリン車やディーゼル車、ハイブリッド車(HV)の燃費競争が目覚ましく、産業ハードルが一気に上がりました。水素価格をさらに下げなければFCVの魅力も薄れてしまうでしょう」(同前)
ちなみに経済産業省は、2015年にガソリン車と同等以下、2020年ごろにHVと同等以下の燃料代にすることが望ましいとするロードマップを作成している。
まだ黎明期といえる水素社会の実現とFCVの普及――。市場調査会社の富士経済によれば、燃料電池車向けの水素燃料市場は2025年に現在の3.7億円からなんと255倍の947億円まで膨れ上がると予測されている。
過度な期待は禁物だが、日本のクルマ産業がどこまで新たなエネルギー革命を促すことができるか、長い目でじっくりと見届けたい。