ビジネス

サムスン 栄華の象徴だった六本木自社ビルから飯田橋に移転

 日本の電機メーカーをごぼう抜きにし、スマホ事業の世界シェアで一時はアップルまでも凌駕したサムスンが苦境に喘いでいる。シェアも利益も右肩下がりとなり、ついには“サムスンの頭脳”とされる日本法人の本拠地を手放すとの情報まで浮上した。

 オフィスビルや高級レジデンスの建ち並ぶ東京・六本木一丁目駅前で、ひときわ目を引くモダンなデザインの高層ビルが「六本木ティーキューブ」だ。サムスンが三井不動産との共同事業として開発し、2003年10月に竣工した地上27階建てのビルである。長崎のハウステンボスなどを設計した事務所がデザインし、1~20階はオフィス層、その上層はレジデンス(住居)になっている。

 2012年の組織改編前まで日本サムスンの本社ビルとして機能し、現在もビルの看板にはサムスン電子ジャパン、サムスン物産、サムスン証券などの名前が並ぶ。同グループの日本法人がオフィス層の上部にあたる16~20階を占めてきた。六本木ティーキューブは、快進撃を続けてきたサムスンにとって栄華の象徴であった。その自社ビルを明け渡すというのである。

 六本木の物件を扱う不動産仲介業者は、すでに「次のテナント探し」が始まっていると明かす。

「今までサムスンの日本法人が入居していた16階部分が、2月10日に『即入居可』としてテナント募集を開始しました。他のフロアでも移転準備が進んでいます」

 サムスン電子ジャパンだけでも数百人が六本木のビルに勤めているため、移転先も話題となっている。別の仲介業者はこういう。

「サムスン電子ジャパンは3月に千代田区の飯田橋駅に近いオフィスビルに移る予定が決まったと聞いている。三井不動産が開発して昨年完成した、商業棟に隣接する物件だ。2月中旬には周辺の不動産業者に『サムスンがビルの持ち分を売りに出すことを検討している』との情報も出回った。三井不動産がサムスンの持ち分を買い取るのではないかといわれている」

 三井不動産は取材に対し、「回答は控えたい」とするのみだった。共著に『サムスン・クライシス』(文藝春秋刊)がある経済ジャーナリスト片山修氏はこうみる。

「六本木ティーキューブは、サムスンの日本進出50年を記念して建てられたビルです。日本メーカーを次々と追い抜いていった同社の勢いを象徴する存在でした。売却情報が事実であれば、現在のサムスンの苦境が反映されてのことだと考えられます。

 サムスンの経営は信賞必罰で、 からなければその部門のトップは厳しく責任を問われる。日本市場でスマホ事業が不振に陥り、コスト削減からビル売却の方針が決められた可能性があります」

 サムスン電子ジャパンの広報担当者は取材に対し、「六本木のビルを出て3月に飯田橋に移転する予定なのは事実」と、移転情報を認めた。

 ただし、「ビルを所有するのはグループ内の別会社。所有分を売却するかどうかは答えられない」とも語った。その上で、今回の移転は後ろ向きな理由によるものではないと説明する。

「サムスン電子ジャパンは、都内では六本木の他にも2か所オフィスを持っていたが、分散していては業務効率が悪くなる。それを改善するための移転だ。新しいオフィスでは約580人の社員が働くことになり、スペースとしては現在の3か所のオフィスを合わせたフロア面積よりも広くなる。

 各所から苦戦といわれるが、当社としてはスマホ含め日本での事業拡大のための移転だと考えている。ブランド投資も営業も強化していくつもりだ」

「SAMSUNG」のロゴが最上部に設置されているビルを出ることが、事業拡大のための前向きの決断だとする言葉はそのまま額面通りには受け取れないが、担当者は日本市場で諦めない意気込みを見せた。

※週刊ポスト2015年3月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン
モデルで女優のKoki,
《9頭身のラインがクッキリ》Koki,が撮影打ち上げの夜にタイトジーンズで“名残惜しげなハグ”…2027年公開の映画ではラウールと共演
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段どおりの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン