芸能

織本順吉 思いを託してセリフ言うときは、その前に息を吸う

 学生時代、演劇部が腹式呼吸と発声の練習をしていた様子を覚えている人も多いだろう。役者歴66年になる織本順吉(88)は、呼吸とセリフと芝居の関係について、最近になってまた、考えを新たにしたと語る。織本が呼吸とセリフについて語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

 * * *
 織本順吉の役者人生は、今年で66年になる。それでもなお、演技に対する探求心は飽くなきものがあるようだ。

「最近になって思うのは、呼吸の合間に言う言葉がセリフなんだということです。ですから、僕が今一番大事にしているのは、セリフを言う時の呼吸法です。

 息を吐いてセリフを言うと、感情が体の中に染み込んでこないんですよ。でも、息を吸ってからセリフを言うと、大したことを考えていなかったとしても、その吸い込む間に観る側が勝手に想像してくれるんです。『この人には厳しい過去があったんじゃないか』とか。

 ですから、想いを託してセリフを言う時は、その前に息を吸い込むことにしています。あるいは、セリフのない場面、たとえば英雄とか哲学者が高尚なことを頭の中で反芻するというような芝居でも、そうです。そういうのは表情だけでできるわけではないので、グッと息を引いて止まると、そういう風に見えてくる。息を吐く時は、極端に言うと『てめえ、この野郎』と喧嘩をする芝居ですね。こういう時は、頭の中に知恵は働いていませんから。

 話を聞く時も同じです。相手の話をちゃんと聞いてない時は息を吐きながら聞く。そうすると信用していない感じが出ますし、引く息で聞くと本気で聞いている感じになっていきます。

 よく『存在感がある』と言いますが、息を吐くセリフの時は存在感は観る側には伝わりません。例えば、相手と怒鳴り合いをしている状態では何も響きませんが、そこからいきなり小さな声で『お前な……』とやると、響いてくるでしょう。それが画面での存在感になります」

 今でも現役としてテレビドラマに出続けているため、大きく年齢の離れた俳優と共演することも多い。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン