「20人の2~3割ほど、天理教の信者さんのお子さんたちを受け入れます。入部を希望する生徒も、一般の受験生と同じように試験を受けなければなりません。野球部だからといって特別な待遇を受けることはありませんし、野球部の活動もあくまで教育の一環です」
それでも紫の野球帽を被り、大きな「天理」の二文字の入ったユニフォームを着て甲子園を目指したいという関西圏の有望選手は多い。彼らのほとんどは信者ではなく、入学の際に入信が義務づけられる。
「寮では教会長さんに講話をしていただくこともありますし、部員で参拝に行ったり、2時のサイレンで拝礼したり、日々の生活の中で神様に触れることで、“困った時の神頼み”じゃないですけど試合中もよりどころができる。それが強みではあると思います」(同前)
野球部は「天理スポーツの三男」と呼ばれている。長男は五輪3連覇を達成した野村忠宏を生んだ柔道部であり、次男はラグビー部。いずれの部活動も全国大会の常連である。
現在の野球部は夏の甲子園を2度制した時(1986年、1990年)の監督である橋本武徳が自身3度目の指揮を執り、元プロ野球選手のOBらがコーチを務める。
橋本は天理教教会本部職員である。信仰心も篤い。そういう人材が指揮官を務めれば一般信者のサポートも得やすいだろう。
●柳川悠二(ノンフィクションライター)と本誌取材班 (文中敬称略)
※週刊ポスト2015年4月10日号