国内

近代批評確立した小林秀雄 全身全霊で祖国の戦争に加わった

 戦争が始まったとき、狂喜したのは一般市民だけではなかった。多くの文学者たちが戦意高揚や礼賛の文章を発表している。詩人の三好達治は、真珠湾奇襲成功を祝した詩を発表し、歌人の斎藤茂吉は『何なれや心おごれる老犬の耄碌国を撃ちしてやまん』、会津八一も『ますらをやひとたびたてばイギリスのしこのくろふねみづきはてつも』と歌った。文芸評論家の富岡幸一郎氏が、文学者たちの言葉を読み解いた。

 * * *
 それは詩人や歌人ばかりではなく、西洋文学を深く受容して、近代批評を確立した小林秀雄のような理論的な批評家も同じであった。

 真珠湾攻撃の機上からの撮影写真から、小林は次のような文章を紡ぎ出す。

《空は美しく晴れ、眼の下には広々と海が輝いていた。漁船が行く、藍色の海の面に白い水脈を曳いて。さうだ、漁船の代わりに魚雷が走れば、あれは雷跡だ、という事になるのだ。海水は同じ様に運動し、同じ様に美しく見えるであろう。……そういう光景は、爆撃機上の勇士の眼にも美しいと映らなかった筈はあるまい。いや、雑念邪念を拭い去った彼等の心には、あるがままの光や海の姿は、沁み付く様に美しく映ったに相違ない》

 戦時中に小林秀雄は『無常という事』『西行』『実朝』『平家物語』など、古典に材をとった名編を執筆している。ランボーやボードレールなど西洋近代の文学を論じてきた小林は、高村光太郎のように開戦に際し歓喜の言葉は記していないが、ここであきらかに日本人の魂の深部に降り立ち、「爆撃機上の勇士の眼」におのが眼差しを重ねている。鋭利な批評家はここで、国民の一人として、全身全霊で祖国の戦争に参加しているといってもよい。

トピックス

ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《子どもの性別は明かさず》小室眞子さんの第一子出産に宮内庁は“類例を見ない発表”、守谷絢子さんとの差は 辛酸なめ子氏「合意を得るためのやり取りに時間がかかったのでは」
NEWSポストセブン
現在、闘病中の西川史子(写真は2009年)
《「ありがとう」を最後に途絶えたLINE》脳出血でリハビリ中の西川史子、クリニックの同僚が明かした当時の様子「以前のような感じでは…」前を向く静かな暮らし
NEWSポストセブン
ファッションの面でも注目を集めている愛子さま(2025年5月18日、撮影/JMPA)
《公務でのご活躍続く》愛子さまのファッションに感じられる“母・雅子さまへのあこがれ”  フェミニン要素で“らしさ”もプラス
NEWSポストセブン
Mrs.GREEN APPLEの冠番組『テレビ×ミセス』(TBS系)が放送される(公式HPより)
《ミセスがテレビに進出!》冠番組がプライム帯で放送される3つの必然性 今後、バラエティ進出が拡大する可能性も
NEWSポストセブン
5月20日の公務での佳子さま(時事通信フォト)
《第一子出産で注目》佳子さま、眞子さんの“お下がりファッション”ブランドは「ご家族で愛用」背景にあった母・紀子さまの影響【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
六代目山口組の新人事、SNSに流れた「序列情報」 いまだ消えない「名誉職」に就任した幹部 による「院政説」
NEWSポストセブン
会話をしながら歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《親子スリーショットの幸せな日々》小室眞子さんは「コーヒー1杯470円」“インスタ映え”カフェでマカロンをたびたび購入 “小室圭さんの年収4000万円”でも堅実なライフスタイル
NEWSポストセブン
元女子バレーボール日本代表の木村沙織(Instagramより)
《“水着姿”公開の自由奔放なSNSで話題》結婚9年目の夫とラブラブ生活の元バレーボール選手の木村沙織、新ビジネスも好調「愛息とのランチに同行した身長20センチ差妹」の家族愛
NEWSポストセブン
宮城野親方
何が元横綱・白鵬を「退職」に追い込んだのか 一門内の親しい親方からも距離置かれ、協会内で孤立 「八角理事長は“辞めたい者は辞めればいい”で退職届受理の方向へ」
NEWSポストセブン
常盤貴子が明かす「芝居」と「暮らし」の幸福
【常盤貴子インタビュー】50代のテーマは「即興力」 心の声に正直に、お芝居でも日々の暮らしでも軽やかに生きる自分でありたい
週刊ポスト
ホストクラブで“色恋営業”にハマってしまったと打ち明ける被害女性のAさん(写真はAさん提供)
ホストにハマったAさんが告白する“1000万円シャンパンタワーの悪夢”「ホテルの部屋で殴る蹴るに加え、首を絞められ、髪の毛を抜かれ…」《深刻化する売掛トラブル》
NEWSポストセブン
西武・源田壮亮の不倫騒動から5カ月(左・時事通信フォト、右・Instagramより)
《西武源田と銀座クラブ女性の不倫報道から5か月》SNSが完全停止、妻・衛藤美彩が下していた決断…ベルーナドームで起きていた異変
NEWSポストセブン