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ビッグダディ TV出演を振り返って「面白くなかった」が感想

テレビのタブーについて語るビッグダディ

 テレビ番組には一般視聴者には分からないタブーがある。子だくさんの「ビッグダディ」として大きな反響を呼んだ林下清志氏が内幕を語る。

 * * *
 あまりテレビに出なくなったいま振り返ってみると、テレビの世界は、「面白くなかった」というのが正直な気持ち。少なくともテレビに出て自分が変わることはなかったし、変わるほどの刺激もなかった。

 2006年から放送された『痛快! ビッグダディ』(テレビ朝日系)の放送当初は、8人連続で年子をもうけたことに対して「女性虐待だ」「子どもがかわいそう」などと結構クレームを受けた。別に気にも留めなかったけど、あの時はテレビの反響の大きさがつくづくわかった。

 そんな素人の俺が情報番組とかに出るようになった。ただ、当初から芸能界入りなんて気持ちはなくて、「芸能界は出稼ぎだ」という感覚だった。

 テレビ業界には素人ではよくわからない独特のルールがあって、たとえば出された料理を「マズイ」というのはNGだった。「これは苦手だな」くらいは言っていいと思ったけど、それもダメだった。

 それこそ自分のスタンスを確立しないまま何となく始めたものだから、立ち位置を見つけられなかった。特に『バイキング』(フジテレビ系)はお笑い芸人がたくさんいて、自分が笑いをとれるわけもない。子育てや料理についても江角マキコさんがいて、彼女が応えていた。なんでも、子どもが多い俺が子育てを語ることは、子どもに恵まれない人らに対して良い印象を与えないんだって。

 情報番組とかに出る前、元妻の美奈子が女性タレントたちにバッシングされているのをテレビで見て、いつか彼女たちと共演したら「このババア張り倒すぞ」って凄んでやろうと思ってたけど、いざ出演してみると、ディレクターやADさんのことを考えたらそんなことできなかった。テレビに多少出続けていると、そんな“しがらみ”みたいなものが出てくるんだなと思った。

 ただの指示待ちだった俺がタレント生活でスタッフと揉めたのは一度だけ。某番組で息子と取っ組み合うシーンのリハーサル風景を「本物のケンカとして放送する」と言われた時だ。このときばかりは「それはヤラセだから、映像は使わせない」と譲らなかったし、いまもきっぱり断って良かったと思う。

 テレビに出てみて、意外だったのは、芸人さんが実は折り目正しかったこと。テレビに出る前はみなさん破天荒なんだろうなと思っていたけど、普段は礼儀正しくて、番組上でキャラを演じているんだなと。みんなテレビのプロではあるけど、常識的で普通の人なんだと気づいて、若干がっかりした。
 
 だから、またテレビに出たいかと聞かれたら、「別にいいや」が本音だな。よく「テレビの魔力」とか言われるけど、俺は別に取り憑かれることはなかった。

※SAPIO2015年5月号

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