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常時「閉店セール」で営業の店は罪に問われる? 弁護士見解

 何かと物入りなこの季節、庶民にとって「セール」の三文字は大変魅力的だが、中には年がら年中「閉店セール」をしている店も存在する。閉店セールを謳っているのに営業している店は罪に問われるか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。

【相談】
 以前に立教大学の学生たちが「閉店セール」と謳っているのに、営業を続けている店に対して消費者庁に異議を申し立てました。私の近所の靴屋も3年前から「閉店セール」の貼り紙を大量に店内に飾っているのにもかかわらず店を閉めません。この靴屋の営業方法も詐欺などの罪に当たるのでしょうか。

【回答】
 誇大広告などを規制する景品表示法は、第4条1項1号で商品やサービスの品質等について、2号で商品等の価格について、実際の物や競争業者よりも著しく有利であると一般消費者を誤認させ、不当に顧客を誘引し、公正な競争を阻害する虞があると認められる不当な価格表示を禁じています。

 閉店セールには通常、商品の品質に関する表示はありません。閉店セールで、商品の価格を安い金額で広告し、集客して店で高く売れば明らかに商品の価格に関する不当表示になりますが、閉店セールで価格の表示がなかったり、広告通りの価格で販売すれば、価格の不当表示にはなりません。しかし、閉店セールと銘打って販売すれば、消費者は普段より安くしているだろうと思うかもしれません。

 そこで、価格についての不当表示になる可能性があります。公正取引委員会のガイドラインでは、安い理由を謳う「倒産品処分」や「工場渡し価格」等の用語や安さの程度を説明する「大幅値下げ」、「他店より安い」等の用語が使われた表示でも、それだけでは不当表示にならないが、その広告で実際の販売価格が通常時や同業者等の価格と比較して、ほとんど差がないのに、大幅に値引きされているような表示を行なう場合は、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え、不当表示に該当する虞があるとしています。閉店セールで、「大幅値引き」などと表示し、実際にはそれまでの販売価格と大差がない場合もそうでしょう。

 結局、閉店セールが不当表示になるかは程度問題です。しかしながら、年中閉店セールを表示していると、他店との比較も難しくなります。消費者も、この程度のことに惑わされない知恵が必要です。

 なお、売買の目的の商品自体に誤魔化しがないので、詐欺罪で処罰を求めるのは無理だと思います。

【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2015年4月24日号

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