ライフ

没後50年の江戸川乱歩 北村薫、横尾忠則各氏が傑作小説を厳選

 作家江戸川・乱歩は70年の生涯で膨大な作品を遺し、小説だけでもその数は100作を超える。今年は乱歩の没後50年。その乱歩ワールドの魅力を、愛読者である各界著名人が厳選した「傑作シーン」とともに読み解こう。

 乱歩の孫で、編集者の平井憲太郎氏(64)は祖父の創作秘話をこう語る。

「たくさん創作していた頃は、書いたものを横で祖母に音読させたといいます。読むのに詰まったり、耳に引っ掛かると書き直して耳触りのいい言葉を選んだ。スラスラ読めることを重視したようです」

 そうして綴られた数々の物語は、あらゆる世代の読み手を虜にしていった。

「作家の値打ちは『その人にしか書けない物語を紡げること』だと思っている。

「その点で乱歩はまさに一流の人」と語るのは直木賞作家の北村薫氏(65)。「我々の時代は、少年探偵団はポプラ社版ではなく、(昭和30年代の)光文社版でないと」(北村氏)という筋金入りの愛読者だ。

 ロックミュージシャンの大槻ケンヂ氏(49)は「虫」のクライマックスに震えた。

「乱歩作品の主人公は人とうまく接することができず社会で生きづらい人たちが多い。そうしたコンプレックスを怪奇幻想で愚かしくも切なく、時にユーモラスに描く乱歩に惹かれます」(大槻氏)

 俳優の佐野史郎氏(60)も、小学生時代からの愛読者。

「今も猟奇的な殺人とか性的嗜好の倒錯した事件が起こりますが、事件を起こす人の内面を、難解な哲学ではなく、平易な文体で語りかけるところが乱歩の魅力です」(佐野氏)

 乱歩の世界をモチーフにした作品をいくつも手がけてきた美術家の横尾忠則氏(78)は、「パノラマ島奇談」のラストシーンに驚嘆した。

「人間の肉体を花火とともに空高く打ち上げ、爆発でバラバラにする発想に驚きました。絵の具のドロッピングのように降り注ぐ血潮と肉塊を登場人物が泰然と見つめるラストシーンには、絵画のような芸術性があります」(横尾氏)

※SAPIO2015年5月号

関連キーワード

トピックス

生成AIを用いた佳子さまの動画が拡散されている(時事通信フォト)
「佳子さまの水着姿」「佳子さまダンス」…拡散する生成AI“ディープフェイク”に宮内庁は「必要に応じて警察庁を始めとする関係省庁等と対応を行う」
NEWSポストセブン
麻辣湯を中心とした中国発の飲食チェーン『楊國福』で撮影された動画が物議を醸している(HP/Instagramより)
〈まさかスープに入れてないよね、、、〉人気の麻辣湯店『楊國福』で「厨房の床で牛骨叩き割り」動画が拡散、店舗オーナーが語った実情「当日、料理長がいなくて」
NEWSポストセブン
保護者を裏切った森山勇二容疑者
盗撮逮捕教師“リーダー格”森山勇二容疑者在籍の小学校は名古屋市内で有数の「性教育推進校」だった 外部の団体に委託して『思春期セミナー』を開催
週刊ポスト
まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
新宿・歌舞伎町で若者が集う「トー横」
虐待死の事例に「自死」追加で見えてきた“こどもの苛烈な環境” トー横の少女が経験した「父親からの虐待」
NEWSポストセブン
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 万引き逮捕の350勝投手が独占懺悔告白ほか
NEWSポストセブン