国内

中露の蜜月に識者「ロシアとはそこそこ友好関係維持すべき」

 ロシアと中国の蜜月が目立ってきた。日本は中国と対立しているだけに、気がかりな展開だ。どうみるか。中国の習近平国家主席は5月8日、対ドイツ戦勝70周年記念軍事式典出席に合わせて訪ロし、ロシアのプーチン大統領と会談した。両者はロシアのユーラシア経済同盟構想と中国のシルクロード経済圏構想を互いに支援、協力することなどで合意した。

 そこで日本だ。中国との緊張関係は明白である。何かといえば歴史問題を持ち出して対日包囲網を構築しようとする試みは、今回の中ロ会談でも繰り返された。

 歴史問題は単なる外交カードにすぎない。真の狙いは尖閣諸島周辺に眠る原油や天然ガス資源である。つまり中国が尖閣への妄想を捨てない限り、抜本的な日中の関係改善は望めない。中国に「心を改める」のを期待できるか。それは当分、望み薄だ。

 となると、鍵を握るのはロシアである。はっきり言って日本がロシアと緊張するのは馬鹿げている。日本は中国ともロシアとも狭い日本海を挟んでいるにすぎない。欧州でさえロシア相手で精一杯なのだ。仮に中国に加えてロシアとも激突するような事態になれば、日本はひとたまりもないだろう。だから、ロシアとはそこそこ友好関係を維持すべきだ。これが日本の戦略的基本線である。

 こう言うと「ロシアとは北方領土問題があるじゃないか」という声が必ず上がる。だが考えてもみてほしい。北方領土は奪われた島だが、尖閣はこれから奪われるかもしれない島だ。まずは島を守る。その上で島を取り返すためにも、友好関係が大事になる。

 安倍晋三首相が戦勝記念式典を欠席した理由について、菅義偉官房長官は「日程の都合」と述べた。このあたりに注意深い配慮がにじみ出ている。これは正しい。

 安倍政権が集団的自衛権の限定行使を容認して安全保障法制を整えようとしているのは、当面は中国と北朝鮮の脅威に対する備えである。だが将来、中ロがさらに接近して日本に圧力を加えるような事態を想定すれば、日米同盟の重要性はますます高まる。

 いや、おそらくそれにとどまらない。中ロが軍事的に連携する悪夢が現実になるようなら、日米はカナダ、オーストラリアなどと一緒にアジア版NATOの具体化を迫られるのではないか。それはちょうど環太平洋連携協定(TPP)の裏返しになるはずだ。

■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)

※週刊ポスト2015年5月29日号

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