美魔女ブームに見られるように、美しさ、そして若さ至上主義ともいえる価値観が根強い一方で、そんな風潮に息苦しさや違和感を覚えている人も少なくない。年齢を受け入れた上で自分なりのファッションを楽しむシニアたちの姿勢や生き方は、下の世代の女性たちにとって、一つの希望にもなっているようだ。
シニア世代のファッション・ビジネスについて、船井総合研究所の上席コンサルタント・岩崎剛幸氏に聞いた。
「これまでシニア世代というと、病気や介護といった面に目が向けられがちでしたが、現在の60代は健康で元気な人も多い。最近、そうしたアクティブな面にも注目が集まるようになってきています。いまの60代は、若い頃にファッションを楽しんできていますから、ファッションで自己表現する喜びを知っています。歳を重ねたなりに、積極的に楽しもうとする方が多いんですね。
また、以前、60代以上の方々に『何に時間を使いたいですか』とアンケートを取ったところ、『旅行』『観劇(歌舞伎、コンサート、舞台、映画等)』『スポーツ(テニス、トレッキング、ゴルフ等)』がベスト3でした。つまり外に出て行きたいという方が多い。そうなると、特に女性は、それ相応の服が必要になりますよね。よってファッションも盛り上がるという面もあります」
シニア世代に向けたブランドなど、供給側も充実してきていると岩崎氏は語る。
「シニア世代になって一番変わるのは“サイズ”です。数年前から、体型変化に細やかに対応したブランドが増えていますね。と同時に、皆さん、デザインには敏感ですから、20~30代向けブランドと同じような感覚で、かつ年齢相応の品の良さを加えたような、センスの良いデザインが求められます。今後、ますます市場は拡大していくと考えられますね」
ちなみに映画の題名『アドバンスト』は、「進歩した」「革新的な」「歳を重ねた」という意味を持つ。生きている限り誰しも平等に歳をとる。年齢に抗せず、むしろ積極的に前に進んでいくことこそ、元気な高齢社会の秘訣かもしれない。