ところが、翌日(29日朝)の同番組でも〈安保法制 対立点浮き彫りに〉と題し、「おととい」というクレジット入りで同じ27日の岡田氏と安倍晋三・首相の質疑応答を流し、「対立点が浮き彫りになってきた」と“再放送”したのである。NHKは「28日」の国会質疑をスルーした。なぜか。
その日に起きたのが、安倍首相が辻元清美・民主党代議士に「早く質問しろよ!」とヤジを飛ばして国会が紛糾した“総理の品格”事件だった。
民放は当日のうちに首相のヤジを報じたが、NHKは当日夜の『ニュース7』『ニュースウオッチ9』で黙殺したうえ、翌朝はわざわざ古い映像を使って首相の失点を隠蔽したのである。
しかも、この日の安保法制のヘッドラインの順番は、「今いくよさん死去」より下に置かれ、「視聴者に安保法制の国会紛糾に関心を持たせたくない」と思っているような構成だった。
NHKが首相のヤジをようやく報じたのは29日に国会審議がストップしてからだ。さすがにその原因を報じないわけにはいかなくなったためだが、ヤジについては谷垣禎一・自民党幹事長の「挑発上手な人もいるので、挑発に乗らないように」という発言でしっかりフォローした。
一方で、国会で首相が非を認めて謝罪(6月1日)したことは当日の『ニュース7』でも、翌朝の『おはよう日本』でも報じなかった。視聴者の中には野党に非があると思い込んだ人もいただろう。
※週刊ポスト2015年6月19日号