城咲:この間お会いしましたけど、緊張が止まりませんね、見透かされているようで。でも楽ですよ。「またお前、演技下手になったんだろう」って言われて、「下手になってるんで呼んでください」って言えるようになったんです。笑ってくれて、「そっか、またやろうな」って。素直になれるという感じで、坂上さんには見透かされてる気がして。人として尊敬していますね。ぼくの中では、芝居の父です。
――ところで、10年離れて、今のホスト業界をどう思いますか?
城咲:なんとも。時代が変わっちゃったし、今の歌舞伎町をぼくは知らないから。ただ、いいクラブって少なくなりました。生バンドがあって、みんなネクタイをして、一気コールをせず、艶のある会話をしながら、ぞくぞくしながら酒を楽しむ。
ぼくの時にはそういう空間があったんです。男が惚れる男がいっぱいいたんですよ。この人悪い人だなぁ、悪いけど格好いいなって。これだけ全部の女性に愛だ恋だ言える、この人の魅力ってなんだろうって。かと思えば、好きだと言わないのに、こんなに人気がある人もいたし。
――今、そんな人はいない?
城咲:営業方法が変わったんじゃないですかね。シャンパンタワーとか、一気コールが流行ったし。ぼくはその前で。意外だと言われるんですけど、シャンパンタワーをやったことがないんです。ぼくのいた頃はお客さんもホストも、格好つけあっていたんです。女の子も一番いいものを着て、背伸びをして。子供が大人になるときって楽しいじゃないですか。あの感覚を楽しめた場所でしたね。
――不景気だと言われている昨今ですが、ホスト業界にエールはありますか?
城咲:学歴もなにも関係ない、みんなが対等。やったらやった分だけ数字が出る露骨な世界なんて、面白いじゃないですか。キャリアとか関係ないからね。10年やったからといってトップになれるわけじゃないから。1か月でNo.1になっちゃう奴はなっちゃうし、20年やったって、No.1を取れない奴のほうが多いし。数字を出せばそれでOK。No.1の時は、店もそいつのルールになっちゃう。
初めはめげますよ、こんなに頑張ってこれしかお給料いただけないの? って。そこを見るんじゃなくて、駆け出しだってNo.1に噛みつけるんだぞと。キャリアがないと同じリングにすら上がらせてもらえないじゃないですか、どの業界も。ホストの世界にはそれがない。そこを楽しんだほうがいいなって思いますね。
――最後に、今後の夢、目標を教えてください。
城咲:今は役者として認知されたいですね。そのためには、来たものを拒まない、どんな役でも。脱げと言われたら脱ぐし、泣けと言われたら泣くし、鼻水垂らしながら暴れて、へんな人を演じろと言われたらやるし。男を抱けと言われたら抱くしね。
【城咲仁 しろさき・じん】
1977年9月23日生まれ。東京都出身。新宿・歌舞伎町の老舗ホストクラブ『クラブ愛』において5年間No.1ホストを務め、カリスマホストとしてブレイクした。2005年、ホストを引退してタレントに転身。俳優、ラジオパーソナリティなどで活躍。薬膳インストラクターや雑穀マイスター、ジュニアスーパーフードの資格があり、料理本も好評。『真剣組~GACHI-GUMI~』のボーカルでもあり、マルチに活動中。
撮影■林紘輝