宮崎の郷土料理というイメージが強い「冷や汁」だが、実は各地方の農村で似たような味わいの料理は食べられてきた。共通しているのは、味噌にすりごまやしそなど何種類かの薬味を入れた冷たい汁だということ。
麦飯にかけて食べる地域も多い。全国各地域の大正~昭和初期の郷土食を書き残している「聞き書」シリーズ(農文協)をひもといてみると、九州では熊本や福岡にも確認できるし、新潟ではかんぴょうを取った後の夕顔の実を具として入れたりもしていた。
そのほか、四国でも高知で「ねぎ、ごぼう、干したじゃこなどを細かく刻んで入れた味噌の冷し汁」をあたたかい麦飯に「ぼっかけ」て食べる風習が確認できる。「ぼっかけ」というと、近年では神戸名物の牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込んだものを指すが、実はこちらももともと「すじこん」と呼ばれている食べ物で、うどんにぶっかけるとき「ぼっかけ(うどん)」という通名が生まれた。
ここにとりあげた「ぼっかけ」「すったて」「呉汁」「冷や汁」だけでもさまざまな符号と相違がある。同名異品、同品異名。かくも地域の食べ物は面白い。