芸能

タモリ口火の「お疲れ様禁止」 「こんにちは」導入の会社も

「子役が誰彼かまわず『お疲れ様です』といって回るのはおかしい」──タモリのこんな発言が大きな波紋を呼んでいる。

 きっかけは7月26日放送の『ヨルタモリ』(フジテレビ系)。タモリが、「『お疲れ様』というのは、元来、目上の者が目下の者にいう言葉。これをわかっていないんですね」と力説し、民放連(日本の民間ラジオ・テレビ業者が所属する団体)が子役に「お疲れ様」といわせないよう申し入れをすべきだとまで提言したのだ。

「我が意を得たり」と声を上げたのが中高年世代である。

「先に帰る若手社員に『お疲れ様です』といわれるとカチンとくる。そこは『お先に失礼します』だろう!」(50代男性)
「後輩に上から目線でいわれているようで、嫌だ」(40代男性)

「お疲れ様」が悪いのか、気にするほうが悪いのか。日本語教育研究者で山形大学地域教育文化学部准教授の園田博文氏はこう話す。

「『ご苦労様です』『お疲れ様です』というのは、本来、人をねぎらう言葉。目上の人が使うのが伝統的で、目下の人が目上の人に使うのは失礼にあたります」

 若い世代は、タモリの指摘にショックを隠せない。

「ビジネスマナー講習で『ご苦労様』は失礼だから、『お疲れ様』を使えと教わったのに」(20代男性)

 園田氏によれば、こうした世代間ギャップが生じ始めたのは、ここ10年から20年ほどのことだという。

「『ご苦労様』は若い人の間でも“上から下”の意識が強いようですが、『お疲れ様』ではその意識が崩れている。その分岐点は40代あたりで、50代、60代以上の人が違和感をおぼえるのは当然でしょう」(園田氏)

「お疲れ様」はいつの間にやら若い世代の中で挨拶のスタンダードになっている。

 NHK放送文化研究所・塩田雄大氏のアンケート調査によれば、その日に会った冒頭の挨拶として「お疲れ様です」を使う人は、60歳以上では36%。20代、30代では59%にのぼる。年配者が使う頻度が高いはずの言葉を、逆に若い世代ほど多用しているのが現実だ。

「若い人たちは悪意ではなく、ねぎらいの気持ちで使っているんだから……」(60代男性)と、あえて指摘しない人がほとんどのようだが、社内で軋轢が生じた例もある。ある広告代理店に勤務する30代女性の話。

「50代のワンマン社長が突然『お疲れ様禁止令』を出したんです。『朝出社してすぐ、疲れてもいないのに、お疲れ様ですはおかしいだろ』と。仕方なく社員みんなで『お疲れ様です』に代わる挨拶を考えたんですが、思い浮かばなくて」

 結局、「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」と、時間帯によって使い分ける“普通の挨拶”に落ち着いたというが、「なんか、よそよそしい感じで、しっくりこないんですよね」と女性社員は首をかしげる。

※週刊ポスト2015年8月14日号

あわせて読みたい

関連記事

トピックス

賭博の胴元・ボウヤーが暴露本を出版していた
大谷翔平から26億円を掠めた違法胴元・ボウヤーが“暴露本”を出版していた!「日本でも売りたい」“大谷と水原一平の真実”の章に書かれた意外な内容
NEWSポストセブン
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(X、時事通信フォト)
大麻成分疑いで“ガサ入れ”があったサントリー・新浪剛史元会長の超高級港区マンション「かつては最上階にカルロス・ゴーンさんも住んでいた」
NEWSポストセブン
清武英利氏がノンフィクション作品『記者は天国に行けない 反骨のジャーナリズム戦記』(文藝春秋刊)を上梓した
《出世や歳に負けるな。逃げずに書き続けよう》ノンフィクション作家・清武英利氏が語った「最後の独裁者を書いた理由」「僕は“鉱夫”でありたい」
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレ(時事通信フォト)
《メンバーの夫が顔面骨折の交通事故も》試練乗り越えてロコ・ソラーレがミラノ五輪日本代表決定戦に挑む、わずかなオフに過ごした「充実の夫婦時間」
NEWSポストセブン
来季米ツアー出場権を獲得した原英莉花(C)Yasuhiro JJ Tanabe
《未来の山下美夢有、竹田麗央を探せ》国内ツアーからQシリーズへの挑戦の動きも活発化、米ツアー本格参入で活躍が期待される「なでしこゴルファー」14人
週刊ポスト
サントリー新浪剛史会長が辞任したことを発表した(時事通信フォト)
《麻薬取締法違反の疑いでガサ入れ》サントリー新浪剛史会長「知人女性が送ってきた」「適法との認識で購入したサプリ」問題で辞任 “海外出張後にジム”多忙な中で追求していた筋肉
NEWSポストセブン
サークル活動にも精を出しているという悠仁さま(写真/共同通信社)
悠仁さまの筑波大キャンパスライフ、上級生の間では「顔がかっこいい」と話題に バドミントンサークル内で呼ばれる“あだ名”とは
週刊ポスト
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さんが綴る“からっぽの夏休み”「SNSや世間のゴタゴタも全部がバカらしくなった」
NEWSポストセブン
米カリフォルニア州のバーバンク警察は連続“尻嗅ぎ犯”を逮捕した(TikTokより)
《書店で女性のお尻を嗅ぐ動画が拡散》“連続尻嗅ぎ犯” クラウダー容疑者の卑劣な犯行【日本でも社会問題“触らない痴漢”】
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《母が趣里のお腹に優しい眼差しを向けて》元キャンディーズ・伊藤蘭の“変わらぬ母の愛” 母のコンサートでは「不仲とか書かれてますけど、ウソです!(笑)」と宣言
NEWSポストセブン
寄り添って歩く小室さん夫妻(2025年5月)
《お出かけスリーショット》小室眞子さんが赤ちゃんを抱えて“ママの顔”「五感を刺激するモンテッソーリ式ベビーグッズ」に育児の覚悟、夫婦で「成年式」を辞退
NEWSポストセブン
負担の多い二刀流を支える真美子さん
《水着の真美子さんと自宅プールで》大谷翔平を支える「家族の徹底サポート」、妻が愛娘のベビーカーを押して観戦…インタビューで語っていた「幸せを感じる瞬間」
NEWSポストセブン