残る最大の課題は、7つめのがんの克服だ。博士は、あらゆるがんの共通点に着目している。
細胞は老化するとDNAの螺旋の両端にあるテロメアという部分が失われて分裂できなくなるが、がん細胞はテロメアが維持されるので無限に増殖してしまう。テロメアを作るテロメラーゼという酵素が活性化するためだ。したがって、テロメラーゼの活性化を阻止すれば、がん細胞の増殖を止められる。
「今後の課題はテロメラーゼの拡大阻止です。ただし正常な細胞にもテロメラーゼが必要なので、正常な細胞の分裂が停止した状態でも皮膚や血液の健康を保たなければなりません。ですから、そのために必要な幹細胞療法の開発も同時に進めています」
7つのハードルをクリアするまでには、まだ時間がかかりそうだ。しかし博士は「20~25年以内には老化阻止が実現するだろう」という。
「五分五分の確率ですが、私たちの研究は成功すると信じています」
※SAPIO2015年9月号