一方、15年間を賃貸で暮らし続ければいくらだろう。同様のマンションを賃貸で借りれば月額24万円。これは下がり続ける。引越しをすれば更新料を払わずに、フリーレントの特典を享受できるはずだ。しかし、ここではずっと住み続けて最初の7.5年を24万円のまま。残りを20万円で計算した。すると3960万円となる。実損額よりもわずかに少ない。
実際は、ここにローン金利の負担があるだろうから、さらに膨らむはずだ。つまり、このシミュレーションでは「買うよりも借りていた方が損をしない」となる。
マンションを購入するメリットは「家賃を払わなくていい」ということが最大。他には、自分の所有物である、という安心感。また、昔は賃貸マンションといえば設備仕様が劣っていたが、今は分譲マンションが賃貸に出されていることが多いので、物件を上手に選べばほぼ同じだ。
一方、購入すれば様々なリスクを背負うことになる。例えば地震がやってきて損害を受ければ、それは所有者たちの費用で補修しなければいけない。上下階や隣戸にヘンな住民がいても、売らないと出ていけない。賃貸なら引越し費用だけで問題は解消。人間関係でトラブルになった場合も同じ。
そして、何よりも資産低下リスクを背負わねばならない。逆に、値上がりすればキャピタルゲインが得られる。ただ、バブル期に買った場合は別。さらに上昇した時に売り抜けないと値上がり益は享受できない。そういうアクロバット的な売買はプロでも難しい。また1割程度値上がりしても、仲介手数料や税金、引越し費用で吹っ飛んでしまう。
その点、賃貸は自由である。転勤や転職にも引越し費用のみで住居を移せる。子どもが有名私立に合格すれば、通学負担の少ないエリアに引っ越すことも可能だ。
「賃貸は自由に模様替えができない」と誤解している人は多い。そんなことはない。原状回復すればいいだけ。大胆な模様替えをしなければ、数十万円の範囲で収まることがほとんどだ。
日本人は、不思議に持家にこだわる傾向がある。農耕民族だから土地に根を生やしたいのだろう。しかし、もっと自由に考えた方がいい。特に今のようなバブル期には、無理をして都心や近郊で新築マンションを買わないほうがいい。