騒動の発端は日本最大の暴力団である山口組から、いくつかの有力団体が脱退したことだった。一般の企業とは違うので、本来なら下部組織に独立する自由はないし、他団体に移籍するのも御法度だ。最もやってはいけないタブーと考えて欲しい。脱退はそのままクーデターを意味し、所属していた暴力団と対立することになる。
暴力団の存在意義を極限まで突き詰めれば、意に沿わない人間は殺すという一点しかない。同業者同士、それも分裂という禁忌のなか、ガラス割り程度なら他のヤクザに笑われる。離脱組が新団体を設立するなら、山口組はメンツにかけて制裁し、殺戮し、潰さねばならない。騒動が長期化すれば、日々の長さの分だけメンツは踏みにじられ、山口組の求心力は低下する。そうなれば抗争の可能性も増える。
ちなみに抗争とは暴力事件が発生し、報復攻撃があった時を起点にする。存在意義を社会に喧伝したいマル暴と、殺しが飯の種であるマスコミは、抗争の勃発を待ち望んでいるだろう。
9月2日現在、新団体は九分九厘設立を宣言すると思われる。処分になった組長は13人から1人増え、計14人だ。全員が新団体に参加するとは限らない。今引き返すなら命は取られないからだ。もし新団体の名乗りを上げ、そこに名を連ねれば、戦って勝つ、もしくは長期間存在し続けて新団体を既成事実にする、あるいは引退して若い衆を山口組に戻すしか生きる道はなくなる。
※週刊ポスト2015年9月18日号