「親分に内緒で、山健の四代目(離脱一派を率いる井上邦雄組長)の継承盃(代替わりの儀式)のビデオ、あと取材で撮った行事の写真あったら欲しいんだ」(同前)
当然拒否する。目的は一つ、組員の顔を把握したいという意味だ。銃声がなるかはともかく、抗争は準備段階に入ったと考えていい。九州における道仁会と九州誠道会の抗争でも、ヒットマンたちは襲名ビデオのキャプチャー写真を持っていた。全国各地の団体から防弾チョッキが両陣営に送られているのも事実だ。一触即発の臨界点は過ぎている。
加えて、山口組側から発信されるリークがきな臭い。破門・絶縁処分には、「トップ当人だけ」という注釈が付いた。親分は絶対だから、分裂になれば若い衆はそれに殉じるのが筋だ。だから離脱組の組員はヤクザの鑑であり、罪はないという意味である。これは切り崩し工作の一環で、すでに離脱組の中で組織が二分している団体が3つある。
「六代目の親分(司忍組長)は『山健組のように、これまで山口組のために血を流してきた名門の名跡がなくなるのは忍びない。普通こんなことになれば、全部の組織が未来永劫お取り潰しだが、もし戻ってくるならそのまま残す』という意向だ」(山口組直参組長)
担ぎ手がいなければ、御輿は走れない。二次団体まで割れた場合、下部組織と付き合いのある業者は「みかじめ料はどちらに払うべきか」と混乱するだろう。
※週刊ポスト2015年9月18日号