ビジネス

松下幸之助氏 1950年代に5年連続で長者番付1位に君臨した

 今年3月に米「フォーブス」誌が発表した世界長者番付で、ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長とソフトバンクの孫正義社長がトップ100にランクインした。近年では「富の集中」の問題性も指摘されているが、かつての社長や会長、創業者はどのくらい稼いでいたのだろうか? 1950年代の長者番付を辿ってみよう。

 1953年度には、その年に朝鮮戦争が休戦したこともあり特需が頭打ちに。炭鉱業者に代わって、電機メーカーなど大企業の創業者が出現することになる。『日本の長者番付』(平凡社新書)の著者で、企業系列の研究者でもある菊地浩之氏がいう。

「4位の松下電器産業社長の松下幸之助の名は、1950年代の長者番付を語る上では外せません。言わずと知れた日本が誇る大経営者の松下幸之助が、大阪で同社を創業したのは1918年。自転車用ランプでヒットを飛ばし、従来型より3割も安い電気アイロンやラジオ製造で財を成し、大企業を形成していきます。1955年に松下電器の資本金は33億円だったのが、10年後には337億円に。同時に長者番付の常連になりました」

 一代で世界的な電機メーカーを築いた幸之助は、1954年度に2位(申告所得額=9510万円。1950年代の国家公務員の初任給は4223円~1万680円)になると1955年度からは5年連続で1位に君臨した。1960年には石橋正二郎・ブリヂストンタイヤ社長に首位を譲るも、翌1961年度に返り咲くと、今度は3年連続でトップを守り続けた。まさに1950年代を代表する長者である。

 1954年度の1位である井植歳男・三洋電機社長(同1億1381万円)は、幸之助の義理の弟であり、もともと松下の役員だった。第二次大戦後の財閥解体で同社を去り、三洋電機を興した。松下や三洋が電化製品を安価で販売し、庶民の手に渡り始めたのが1954年頃で、電気洗濯機、電気冷蔵庫、白黒テレビが「三種の神器」と呼ばれるようになった。

 朝鮮特需から景気が上向きになり、1954年頃の「神武景気」から日本は第一次高度経済成長期に入った。1956年の経済白書には「もはや戦後ではない」と記され、戦後復興から日本が本格的に立ち直った時期といえる。1956年度の8位(同9005万円)になった出光佐三・出光興産社長は、百田尚樹のベストセラー小説『海賊とよばれた男』のモデルになったことでも知られる。

 他にも時代の顔がランクインしていた。藤山コンツェルンのトップで外務大臣を務めた藤山愛一郎(1958年度2位)、竹中錬一・竹中工務店社長(1959年度4位)や大倉財閥を作った大倉喜八郎の長男で後にホテルオークラを作った大倉喜七郎・川奈ホテル社長(1959年度5位)などだ。彼らもまた1950年代を代表する大金持ちだった。

(文中敬称略)

※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号

関連記事

トピックス

元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカル
【ニコラス・ケイジと共演も】「目標は二階堂ふみ、沢尻エリカ」グラドルから本格派女優を目指す西本ヒカルの「すべてをさらけ出す覚悟」
週刊ポスト
阪神・藤川球児監督と、ヘッドコーチに就任した和田豊・元監督(時事通信フォト)
阪神・藤川球児監督 和田豊・元監督が「18歳年上のヘッドコーチ」就任の思惑と不安 几帳面さ、忠実さに評価の声も「何かあった時に責任を取る身代わりでは」の指摘も
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン