国際情報

「北朝鮮の方がマシ」韓国の脱北者差別に嫌気さし「脱南」も

 北朝鮮の圧政から韓国に逃れるいわゆる「脱北者」と呼ばれる人々は年間約1500人にも達する。しかし、“安住の地”のはずの韓国で彼らを待ち受けているのは過酷な生活だ。脱北者支援活動などをしている宋允復氏が解説する。

 * * *
 脱北者を待ち受ける就労の現実は厳しい。ソウルで旧知の脱北者が憤る。

「同じ労働条件なのに脱北者は外国人扱いで月給は3割少なく、ボーナスは3分の1だ。文句を言えばクビでおしまい。とことん足元を見られる。憲法でも国民と規定され、言葉の壁もない、税金も同じく納めているのに外国人扱いされるのは不当だが、公的機関に訴えたところで時間と費用の無駄にしかならない」

 北朝鮮離脱住民支援財団の調べによると、2014年において脱北者は韓国人より週平均3時間以上長く働くのに月収は76万ウォン(7万6000円)も少ないことがわかった。しかも4人に1人が「脱北者という理由で差別された」と答え、日雇い労働者の割合も韓国人より3倍以上多かった。

 定着に成功しているかに見える北朝鮮の元エリートも疎外感を覚えるようだ。旧ソ連に留学経験があり、平壌の中枢で多方面の業務を経験した40代の脱北者は、韓国で優遇され政府機関の諮問委員や大学講師を務めているが、こんな本音を打ち明ける。

「競争が激しい韓国社会では学縁、地縁、血縁が固く結びつくが、“よそ者”の脱北者は見えない壁があって排除される。学歴社会の韓国で、多くの脱北者が生活を安定させようと上を目指しているが、いざ博士号を獲得したところで大学教授にはまずなれない。

 北朝鮮は貧しいが、『一つは全体のために、全体は一つのために』というスローガンがあり、苦しくとも互いに助け合おうという美風がまだまだある。金正恩体制が崩壊したら、早く北に戻って新たな国家建設に参画したい」

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン