国内

評論家・呉智英氏でさえ誤用した「治外法権」「牽制」の意味

 評論家・呉智英氏といえば、博識で鋭い論を展開することで知られるが、そんな同氏であっても言葉の誤用はあったという。一体どんな言葉をいかに誤用していたのか。呉氏が敢えて自身の過去を振り返る。

 * * *
 言葉は変化する。時代によって、また、地域や年代や階層によって。古語と現代語は同じではないし、方言は土地ごとに様々だし、流行語は生まれては消えを繰り返す。そうであれば、言葉の正誤などないように思える。そう主張する人もいる。

 しかし、それはあまりにも雑駁な意見だ。言葉には、雅俗の別もあるし、適不適の別もある。学術用語や専門用語などは、正しく使わなければ真当な議論もできない。論理や思想に関わる言葉は正しくなければ、内容が保証されないのだ。

 と言ってみたものの、私自身、誤って使っていた言葉もある。自らの恥を公表することで言論界に警鐘を鳴らしてみようか。

 まず「牽制」。

〈プーチン大統領は軍事演習を敢行してEU諸国を牽制した。〉

 新聞やテレビのニュースでよく見る表現だ。しかし、これは「威嚇」であって「牽制」ではない。「牽」は「牽引」の「牽」。牛を(牛が)引くことである。従って、「牽制」は、自分の方に引きつけて相手を制することを言う。

 野球でピッチャーがランナーに牽制球を投げるのは、ピッチャーが自分の方にランナーの注意を引きつけて動きを制するのだから、これは正用である。野球解説者の方が政治解説者より正しい言葉を使っているのも、なんだかなぁである。

 私は、次のように間違って使っていた。

〈三権分立は立法・行政・司法が相互に牽制し合う制度である。〉

 ここは「相互に掣肘」か「相互に監視」が正しい。それでもあえて言い訳すれば、三権がそれぞれ自分の方に注意を向けさせていると取れば、なんとか意味は通らないでもない。

 しかし、言い訳できない誤用もしていた。「治外法権」である。

関連記事

トピックス

永野芽郁のマネージャーが電撃退社していた
《坂口健太郎との熱愛過去》25歳の永野芽郁が男性の共演者を“お兄ちゃん”と呼んできたリアルな事情
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン