彼が組織していた仕手集団は「誠備グループ」と呼ばれ、顧客には大物政治家や有名財界人の名が挙がっていた。1981年に所得税法違反で逮捕されるが、顧客名簿を隠し通したことで、業界の信頼を一気に集めた。

 最近は少額の投下資金で動かせる中小型株を扱い、確率と統計を用いた数学理論を仕手戦に取り入れていたとされるが、最後の判断は「加藤氏の勘と経験に依っていた」(前出・伊藤氏)という。

 自身のサイトなどを使い、投資家の射幸心を煽る情報を発信して相場を盛り上げ、利益を短期間で確定させる──株価を操る手口も昔と変わらなかった。

 バブル崩壊後も「最後の相場師」として活動してきた加藤氏だが、近年は加齢や持病による衰えから、都内で入院生活を送っている。

「糖尿病のほかに腎臓なども患っていて、週3回の透析は欠かせない状態。歩くのも摺り足で這うような動きで、時に車イスを使うこともある。それでも株をやめないのは“株が人生そのもの”だから。

 今回の当局の動きについて本人は、ネットで情報発信したことが風説の流布だと断定されていることに納得がいかないようで、病気を理由に特捜部からの事情聴取を拒否しています」(加藤氏の友人)

 加藤氏の体調が捜査の最大の壁となる中、特捜部は立件に意欲を見せている。

「加藤氏の仕手相場に投じられた資金の流れを解明することで、特捜部は政界やスポーツ界の大物にまで捜査の視野を広げたいとの意図を持っている。立件されようとされまいと、今回の捜査で加藤氏が株式市場の表舞台から身を退くことになる可能性は極めて高い」(前出・伊藤氏)

※週刊ポスト2015年11月13日号

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