田中は翌9月に訪中。1978年8月の日中平和友好条約締結に向け、事態は一気に動き出す。この一連の流れを、日中関係史に詳しい東京大学の石井明名誉教授はこう評す。

「公明党は当時野党であり、竹入氏も田中首相の密使というわけではなかったのですが、結果的にそのような働きをしたことは事実です」

 当時の中国は、台湾への圧力強化やソ連との対立が進行していた事情などから外交力を強化する必要性があった。そこに平和外交路線の公明党議員が現れたことは渡りに船だった。

「偶然性が強いとはいえ、中国は公明党に対して一定の評価を与えた。現在でも山口那津男代表が習近平国家主席と複数回面会できているのはその表れです。また創価大学は中国からの留学生を多数受け入れてきており、そのOBの中には現在、駐日中国大使を務める程永華もいます」(前出・石井氏)

 そのほかにも駐長崎総領事や駐札幌総領事を歴任した外交官の滕安軍も創価大のOB。公明党・創価学会は、こうした人脈を中国政府内に持っている。

 近年では2012年に華春瑩報道官が公式記者会見で池田大作の名前を出して「日中関係の立て直しと発展のため尽力してきた」と礼賛。2013年には中国共産党の機関紙『人民日報』が創価学会を賛美する特集を組んだこともあった。

 1972年9月に訪中した田中角栄を出迎えた周恩来は、「飲水思源(井戸の水を飲む際には、井戸を掘った人の苦労を思い出そう)」と語った。

「この“井戸を掘った人”こそ池田先生を指している」と前出の創価学会幹部は胸を張って語る。

 これには同じく日中友好に尽くした日本の政治家や実業家らを指すとの異論もある。だが、公明党・創価学会の側にも、その宗教平和外交を展開しようとの戦略性があったのは、歴史の事実であろう。

※SAPIO2015年12月号

関連記事

トピックス

世界中でセレブら感度の高い人たちに流行中のアスレジャーファッション(左・日本のアスレジャーブランド「RUELLE」のInstagramより、右・Backgrid/アフロ)
《広瀬すずもピッタリスパッツを普段着で…》「カタチが見える服」と賛否両論の“アスレジャー”が日本でも流行の兆し、専門家は「新しいラグジュアリーという捉え方も」と解説
NEWSポストセブン
浅香さんの自宅から姿を消した内縁の夫・世志凡太氏
《長女が追悼コメント》「父と過ごした日々を誇りに…」老衰で死去の世志凡太さん(享年91)、同居するスリランカ人が自宅で発見
取締役の辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングスとフジテレビ(共同通信社)
《辞任したフジ女性役員に「不適切経費問題」を直撃》社員からは疑問の声が噴出、フジは「ガバナンスの強化を図ってまいります」と回答
NEWSポストセブン
子宮体がんだったことを明かしたタレントの山瀬まみ
《“もう言葉を話すことはない”と医師が宣告》山瀬まみ「子宮体がん」「脳梗塞」からの復帰を支えた俳優・中上雅巳との夫婦同伴姿
NEWSポストセブン
愛子さま(写真/共同通信社)
《12月1日がお誕生日》愛子さま、愛に包まれた24年 お宮参り、運動会、木登り、演奏会、運動会…これまでの歩み 
女性セブン
海外セレブの間では「アスレジャー
というファッションジャンルが流行(画像は日本のアスレジャーブランド、RUELLEのInstagramより)
《ぴったりレギンスで街歩き》外国人旅行者の“アスレジャー”ファッションに注意喚起〈多くの国では日常着として定着しているが、日本はそうではない〉
NEWSポストセブン
虐待があった田川市・松原保育園
《保育士10人が幼児を虐待》「麗奈は家で毎日泣いてた。追い詰められて…」逮捕された女性保育士(25)の夫が訴えた“園の職場環境”「ベテランがみんな辞めて頼れる人がおらんくなった」【福岡県田川市】
NEWSポストセブン
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
【複雑極まりない事情】元・貴景勝の湊川親方が常盤山部屋を継承へ 「複数の裏方が別の部屋へ移る」のはなぜ? 力士・スタッフに複数のルーツが混在…出羽海一門による裏方囲い込み説も
NEWSポストセブン
アスレジャースタイルで渋谷を歩く女性に街頭インタビュー(左はGettyImages、右はインタビューに応じた現役女子大生のユウコさん提供)
「同級生に笑われたこともある」現役女子大生(19)が「全身レギンス姿」で大学に通う理由…「海外ではだらしないとされる体型でも隠すことはない」日本に「アスレジャー」は定着するのか【海外で議論も】
NEWSポストセブン
中山美穂さんが亡くなってから1周忌が経とうとしている
《逝去から1年…いまだに叶わない墓参り》中山美穂さんが苦手にしていた意外な仕事「収録後に泣いて落ち込んでいました…」元事務所社長が明かした素顔
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)(Instagramより)
《俺のカラダにサインして!》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)のバスが若い男性グループから襲撃被害、本人不在でも“警備員追加”の大混乱に
NEWSポストセブン
(左から)中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏の人気座談会(撮影/山崎力夫)
【江本孟紀・中畑清・達川光男座談会1】阪神・日本シリーズ敗退の原因を分析 「2戦目の先発起用が勝敗を分けた」 中畑氏は絶不調だった大山悠輔に厳しい一言
週刊ポスト