強引に真相究明の動きを封じた幹部C。この人物こそ、県から同財団に天下りした専務理事で、死亡事故の現場にいた医師だった。同財団は「専務理事は多忙」として取材を拒否。そこで検診が終了した会場で、専務理事に接触した。
──なぜすぐに蘇生措置をされなかったんですか。
「ちょっと待ってください。押し掛けてきてですな、答えろとは」
──公益財団法人には情報公開をする義務があります。
「知りません、私は私の常識で動きます」
──真相究明すべきとの意見を抑え込みましたか?
「私の耳には、もうあなたの声は入ってませんよ」
そういって専務理事はその場を立ち去った。
この女性は死亡事故の3年前、同財団と別の組織が実施した検診でも具合を悪くしていた。その検査を担当した放射線技師が、取材に応じた。
「X線撮影で8枚中の5枚目を撮り終わった時点で、突然に苦しみ出したんです。『本当に苦しいのでやめてほしい』と。撮影は中止、女性には待合室に移動してもらい、横になって休んでもらいました。それから東近江市の保健師さんを呼びました」
すぐに横にして保健師に見守りを指示した放射線技師、うつむいた状態で放置した同財団。異変直後の対応が、命を大きく左右したのではないか。
「無理にバリウムの検診を受けなくても、胃カメラや血液検査(リスク検診)もあるので、自分の身体にあった検査でやったほうがいい、と保健師にいいました」
このアドバイスを保健師が女性に伝えていれば、3年後にバリウム検査を受け、亡くなることはなかったのではないか。取材に対して、東近江市はこう回答した。
「当時の技師が保健師に伝えたという事実は把握しておりません」
※週刊ポスト2015年11月13日号