国内

バリウム検査で死亡の50代女性 実施財団が事実もみ消し工作

 日本では年間約5万人が胃がんで亡くなっている。その早期発見のために、毎年1000万人以上がバリウム検査を受けているが、実はこの検査は見逃しが多く、死亡事故も起きている。新刊『バリウム検査は危ない』を上梓したジャーナリスト・岩澤倫彦氏がバリウム検査がはらむ危険性について、警鐘を鳴らす。

 * * *
 以前本誌でレポートした際には、2012年に滋賀県東近江市のバリウム検査で50代女性が死亡したケースを取り上げた。

 日本対がん協会グループの滋賀県健康づくり財団は、取材に対して「女性が以前のバリウム検査で気分が悪くなったことを申告しなかった」と回答。その結果、アナフィラキシーショック死(※注)したものであり、「自己責任」と示唆した。だが、筆者は疑問を呈する記事を書いた。

【※注/アレルギー反応の一種で吐き気や血圧の低下を引き起こし、死に至る場合もある】

 掲載後、記事に共感した関係者が現われて、重要な内部資料の提供を申し出てくれた。この内部資料を読み、驚きと怒りが込み上げた。初期対応が適切であれば、女性が死なずに済んだ可能性を示していたからだ。

 その一つが、女性の様子や財団スタッフの対応の記録である。女性は気分が悪いと訴えて検査を中断してから、ソファにもたれるように、俯いた姿勢で放置されていた。この姿勢が気道を圧迫、心停止になった可能性がある。複数の救急医は、身体は横にすべき状況だったと証言した。

 さらに、女性が痙攣を起こした際、財団の医師は血圧の測定をするのみで、人工呼吸などの救命措置をしていなかったことが提供された内部資料から明らかになった。つまり、心停止した直後に適切な対応がされなかったことが、死につながった可能性が考えられる。

 入手した財団の会議の録音資料では、ある人物がもみ消しともいえる発言をしていた。

幹部A:胃がん検診で亡くなった原因は?

幹部B:分からないです。私どもの検診に何の問題もないと、滋賀県がおっしゃってますので。

幹部A:一刻も早く原因を究明して、ご遺族に報告するのが筋です。

幹部C:それは言うなって! 後のことは僕が責任もって引き取りましょうって言うてまんねや。

関連キーワード

トピックス

若手俳優として活躍していた清水尋也(時事通信フォト)
「もしあのまま制作していたら…」俳優・清水尋也が出演していた「Honda高級車CM」が逮捕前にお蔵入り…企業が明かした“制作中止の理由”《大麻所持で執行猶予付き有罪判決》
NEWSポストセブン
「正しい保守のあり方」「政権の右傾化への憂慮」などについて語った前外相。岩屋毅氏
「高市首相は中国の誤解を解くために説明すべき」「右傾化すれば政権を問わずアラートを出す」前外相・岩屋毅氏がピシャリ《“存立危機事態”発言を中学生記者が直撃》
NEWSポストセブン
3児の母となった加藤あい(43)
3児の母となった加藤あいが語る「母親として強くなってきた」 楽観的に子育てを楽しむ姿勢と「好奇心を大切にしてほしい」の思い
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
過去にも”ストーカー殺人未遂”で逮捕されていた谷本将志容疑者(35)。判決文にはその衝撃の犯行内容が記されていた(共同通信)
神戸ストーカー刺殺“金髪メッシュ男” 谷本将志被告が起訴、「娘がいない日常に慣れることはありません」被害者の両親が明かした“癒えぬ悲しみ”
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン
木瀬親方
木瀬親方が弟子の暴力問題の「2階級降格」で理事選への出馬が絶望的に 出羽海一門は候補者調整遅れていたが、元大関・栃東の玉ノ井親方が理事の有力候補に
NEWSポストセブン
和歌山県警(左、時事通信)幹部がソープランド「エンペラー」(右)を無料タカりか
《和歌山県警元幹部がソープ無料タカり》「身長155、バスト85以下の細身さんは余ってませんか?」摘発ちらつかせ執拗にLINE…摘発された経営者が怒りの告発「『いつでもあげられるからね』と脅された」
NEWSポストセブン
結婚を発表した趣里と母親の伊藤蘭
《趣里と三山凌輝の子供にも言及》「アカチャンホンポに行きました…」伊藤蘭がディナーショーで明かした母娘の現在「私たち夫婦もよりしっかり」
NEWSポストセブン
高石あかりを撮り下ろし&インタビュー
『ばけばけ』ヒロイン・高石あかり・撮り下ろし&インタビュー 「2人がどう結ばれ、『うらめしい。けど、すばらしい日々』を歩いていくのか。最後まで見守っていただけたら嬉しいです!」
週刊ポスト
2021年に裁判資料として公開されたアンドルー王子、ヴァージニア・ジュフリー氏の写真(時事通信フォト)
《恐怖のマッサージルームと隠しカメラ》10代少女らが性的虐待にあった“悪魔の館”、寝室の天井に設置されていた小さなカメラ【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン