というのも、史実との関係があるからだ。あさのモデルである広岡浅子と夫(信五郎)の間には、娘しか生まれなかったため、跡継ぎのために実家(三井家)から連れてきた女中のムメ(通称・小藤)を妾に据え、彼女が産んだ男児(松三郎)が跡継ぎになった。広岡浅子はこの子をたいそうかわいがり、大同生命の社長にまで育て上げたという。
 
 もし、このふゆがムメをモデルにしているとすれば、今後、お世継ぎを産むために新次郎の妾になる、という展開が予想されるのだ。
 
 現在はっきりしているのは、あさと新次郎の間に娘が生まれるところまでで、その後がどうなるかは分かっていない。ふゆをめぐっては、新次郎への淡い恋心がほのめかされる一方で、加野屋の中番頭(三宅弘城)がふゆに思いを寄せる様子も描かれるなど、今後も予断を許さない。
 
 ただし、ヒロインの夫が妾をつくるなどということが、朝ドラの視聴者に受け入れられるかどうか。新次郎自身が否定しているし、放送関係者の間でも、「妾の部分は史実と変えるのではないか」との説が大勢だ。
 
 そんななか、『あさが来た』の大ファンで、明治時代を舞台にした漫画『大東亜論』で知られる小林よしのり氏は、「絶対に妾を描くべきだ」と主張する。
 
「明治の時代には、お家を残すために妾がいることは当たり前だったわけで、単身で炭鉱に乗り込むなど過激な描写に挑んできた『あさが来た』には、そこから逃げてもらいたくない。正妻と妾の葛藤や、当時の道徳観を描いてこそ、本物のドラマになるはずです」
 
 ますます目が離せない。

※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号

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