食べ物を楽しみにしている人も多い。人気はラーメンと寿司だ。
「外国人でも『ラーメン』はそのまま『ラーメン』で通じます(笑)。欧米の人は『日本にはラーメンというヌードルがあると聞いたので食べてみたい』と相談にこられるんですが、台湾やタイのお客さんは『トンコツの店はどこか』とか、ラーメンの種類まで細かく聞かれます。あと『浅草に牛カツの美味しいお店があるらしいんだけど』とか、最近の流行までみなさん本当によくご存じですよ。雷門の前にお店があるんですが、私、お客さんに教えられるまで知りませんでしたもん(笑)」
寿司は名店より、「レールに運ばれてくるのが面白い」と回転寿司が人気だ。だがある日、お店を紹介したスイス人カップルが「なにも食べられるものがなかった」としょげて帰ってきた。なんでもスイスでもよく食べていたカリフォルニアロールの「本場もの」を期待したのに、「サカナばっかり流れてきた」と嘆いていたそうだ。
また焼きそばのカップ麺も人気がある。安くて容器が大きいので、食べ甲斐があると思うらしい。
と、ちょうどそんな話をしているときに、ホステルに白人の女性が焼きそばカップ麺を持って帰ってきた。フロントのスタッフに作り方を訊ねている。スタッフが3本指を立てて「ベリー インポータント スリーミニッツ」と念押ししているのがおかしい。カップ麺の作り方を指南するのも、8人いるここのスタッフの重要な仕事のひとつである。
女性はアメリから来たステファニーさん、まだ来日2日目。石油会社にお勤めで、休暇を取ってこれから3週間かけて(!)日本のあちこちを見て回るのだという。
「スーパーに入ったらこの焼きそばがたくさん積まれていて、興味を持ったから買ってきたんです」
と、湯切りしてからソースを入れる焼きそばカップ麺を作る「お作法」が楽しそうだった。恐らくこういうところもうける理由なのだろう。
とはいっても彼女のようにジャンクフードを楽しめるお客さんばかりではない。鎌田さんが気をつけているのが、「ベジタリアン」だ。鎌田さんの本で初めて知ったのだが、ひとくちに「ベジタリアン」といっても「動物の肉はNOだけど魚はOK」という「ペスコ・ベジタリアン」から「果物しか食べない」という「フルータリアン」まで実に幅広い。
鎌田さんはホステルでパーティをするときは、ベジタリアンのお客さんひとりひとり確認していく。またベジタリアンのお客さんが「焼き鳥のお店を体験してみたい」といえば、スタッフが知り合いの焼き鳥店に連絡し、「野菜だけ食べる外国人のお客さんでもいいか」と確認して紹介したこともある。