国際情報

櫻井氏 中国の脅威に台湾や東南アジア諸国と連携の必要語る

韓国南西部の全州市にも設置された慰安婦像

 本来、外交上手だった日本人だが、近年は中国や韓国の暴走を許し、ロシアとの北方領土交渉も暗礁に乗り上げるなど、“敗戦”続きとなっている。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が、日本は軍事力よりも「現地の人々の生活を向上させる」という日本版ODAに見られる「利他の精神」で国際貢献する方法を考えるべきだと説く。

* * *
 大事なことは、価値観を掲げて外交するとき、いざとなればその価値観を守るために雄々しく立ち上がる覚悟と軍事力も備えていなければならないということです。軍事力を前面に押し出す必要もなく、また日本にはそのようなことは似合いません。しかし、軍事力は外交を支える重要な要素であることを軽視してはならないと思います。
 
 外交を支える要素として、価値観、軍事力に加え、もうひとつ重要なのが「地政学」です。戦後の「外交を考えない仕組み」の中で日本人は地政学的思考を長く忘れ去っていました。

 地政学は、目の前の相手だけではなく世界全体を俯瞰して物事を多国間関係の中で捉える考え方です。

 日本は鎖国前、中世の時代から海外交易を盛んに行い、進取の気象を発揮した国でした。往時の我が国は「アジアの中の日本」という地政学的視点に立って外交を展開していました。いまこそそうした視点を取り戻すべきです。
 
 中国の脅威を目の前にして、中国だけを見るのではなく、やはり同様の脅威に晒されている台湾や東南アジア諸国との連携を図る。日米同盟をより堅固にし、自由と民主主義、法の支配などの価値観を同じくするヨーロッパ諸国をも日本側に立たせる。そのための戦略を考え出すことが必要です。最近、中国やロシアがあまりにも横暴になり、その結果、ようやく日本でも地政学的思考が取り戻されつつあるように感じます。

 今後の世界情勢はさらに混迷を深め、自由と民主主義、国際法と平和的解決を志向する国々と、帝国主義的価値観で軍事力を優先する国々のせめぎ合いが激化するでしょう。
 
 日本が自由と民主主義の価値観を貫き、「利他の精神」で国際社会への貢献を続け、雄々しく立ち上がる気概を持ち続ければ、21世紀の外交では必ず日本が勝利すると、私は確信しています。

※SAPIO2015年12月号

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