「汚れを気にして暗めの色の家具を選ぶ人が多いので、どうしても部屋の印象が暗くなりがちです。ホームステージングでは明るく広く見せるために白を多く使います。もちろんタオルなどもホテルのようにフカフカの白いものを置いておく。

 お客様は部屋に入って6秒で買うか買わないかを決めるといわれています。その6秒をどう演出するかが鍵なのです」(同前)

 見かけだけでなく「香り」の演出も効果的だという。

「ホームステージングによって、8000万円の物件なら300万~400万円、5000万円の物件でも100万~200万円は売却価格が変わる。成約までの時間も短くなります」(同前)

 ホームステージングは自分でやることも可能だ。東京・渋谷区在住の男性が自らの経験を語る。

「仲介業者に『高級感を演出するために、観葉植物をとにかくたくさん置いてください』とアドバイスされたので、内覧の前に近所の花屋で大小5点を計5000円で買い、大きなものはリビングに、小さなものは洗面台や風呂場に置きました。

『明るい部屋は好印象を与えるので、部屋中の照明を点けておいてください』とも言われました。そのおかげか、見学に来たご夫婦は『新築みたい』と気に入り、その日のうちに購入を決めてくれました。6年前に6000万円で買った2LDKのマンションが6240万円で売れました」

 もちろん、掃除をきっちりやっておくことは基本中の基本だ。『素人でもできる賢くマンション・住宅を売る方法』(週刊住宅新聞社刊)の著者でエージェントサービス社長の石井成光氏はこう語る。

「マイホームは奥さんがウンと言わないと絶対に買わない。とくにキッチン周りの掃除は大切です。また薄暗い部屋では印象が悪いので、電球を拭いておくだけでも違ってきます」

 さらに売るタイミング次第で、仲介手数料を減らせるチャンスも。

「9月末と3月末は上半期と下半期の締めの時期で、どの仲介業者も駆け込みで営業成績を上げたい。もし購入希望者がすでにいれば、業者は『なんとか3月末までに契約してもらえないか』と、手数料の減額を提案することもあります」(ある仲介業者)

 人生で最大の“売り物”でもある自宅マンション。悔いのないように、入念な売却戦略が求められる。

※週刊ポスト2015年12月11日号

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