国際情報

中国最大の建設計画「首都機能移転」 北京市予算半額分投入

通州の首都機能移転完成予想図(通州区のHPより)

「いま、中国で最も開発が進んでいるのは、ここ。通州ですよ。なんと言っても、ここに首都機能が移転し、副都心が建設されるからです」

 北京市政府関係者はこう明かす。北京市計画委員会は今年、約4500億元(約9兆円)の北京市の公共予算支出のうち、半分の2250億元(約4兆5000億円)もの巨費を通州区に投じる。それだけに、有象無象の政商が利権を求めて群がっているが、そのなかに習近平ファミリーの暗躍もささやかれているという。ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。

 * * *
「通州」は北京市を構成する14区2県のうち東部に位置する区のひとつ。習近平国家主席が10年の任期中で最大の建設プロジェクトと位置付ける首都経済圏構想の要となる「首都機能移転」の核心地区だ。

 どのような都市を作ろうとしているのだろうか。すぐに浮かぶのは直轄市の天津や上海のようなイメージだ。

 北京市中心部から、その通州に車で向かった。ところが、高速道路でほぼ10分で着いてしまい、拍子抜けした。距離的には10キロほどで、すぐ隣という感覚だ。街中を20分ほど走ると、区の中心部には大きな公園があり、その真ん中を大きな川が貫いている。

「これは『京杭大運河』という中国を南北に縦断する、かつての運河の一部」。こう地元民から説明を受けて、驚きを新たにした。

 大運河は杭州から北京までを結び、途中で黄河と揚子江を横断して総延長は2500キロにも達する。通州はその最終地点だ。天津から運河が伸びているのだ。

 運河の淵源は紀元前403年から始まる戦国時代にある。秦の始皇帝が紀元前221年に中国を統一してからも建設が進められ、隋代(581-618年)の初代皇帝・楊堅と二代皇帝・煬帝の二代にわたる大規模工事によって、ようやく一応の完成をみる。

 しかし、100万人もの民衆が工事に動員されたことで、民の恨みを買い、巨額な工事費が支出されたこともあって、隋は二代で滅んでしまう。その後も大運河の建設は歴代王朝によって進められ、最終的に現在の中国共産党政権によって、再び整備が行われ、2000t級の船が通行できるようになっている。

 そのような大運河の北端に位置する通州が新たな首都圏を形成することは、なにか歴史の因縁を感じざるをえない。

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜の街にも”台湾有事発言”の煽りが...?(時事通信フォト)
《“訪日控え”で夜の街も大ピンチ?》上野の高級チャイナパブに波及する高市発言の影響「ボトルは『山崎』、20万〜30万円の会計はざら」「お金持ち中国人は余裕があって安心」
NEWSポストセブン
東京デフリンピックの水泳競技を観戦された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年11月25日、撮影/JMPA)
《手話で応援も》天皇ご一家の観戦コーデ 雅子さまはワインレッド、愛子さまはペールピンク 定番カラーでも統一感がある理由
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんを支える「絶対的味方」の存在とは
《ドッグフードビジネスを展開していた》大谷翔平のファミリー財団に“協力するはずだった人物”…真美子さんとも仲良く観戦の過去、現在は“動向がわからない”
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「金の無心をする時にのみ連絡」「断ると腕にしがみついて…」山上徹也被告の妹が証言した“母へのリアルな感情”と“家庭への絶望”【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
被害者の女性と”関係のもつれ”があったのか...
《赤坂ライブハウス殺人未遂》「長男としてのプレッシャーもあったのかも」陸上自衛官・大津陽一郎容疑者の “恵まれた生育環境”、不倫が信じられない「家族仲のよさ」
NEWSポストセブン
悠仁さま(2025年11月日、写真/JMPA)
《初めての離島でのご公務》悠仁さま、デフリンピック観戦で紀子さまと伊豆大島へ 「大丈夫!勝つ!」とオリエンテーリングの選手を手話で応援 
女性セブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(読者提供)
《足立暴走男の母親が涙の謝罪》「医師から運転を止められていた」母が語った“事件の背景\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\\"とは
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン