日本の場合は「高給アルバイト募集」というリクルーティングシステムを考案して導入した。東京大学など各大学の掲示板で夏休みや春休みに、3年生を対象に「日当1万円・2週間」でアルバイトを募集したのである。
当時の日本ではマッキンゼーが何の会社か、まだ誰も知らなかったが、それでも日当1万円という破格の条件だと、それに釣られて大勢集まるのだ。その学生たちに我々が適当に考えた“頭の体操”になりそうなテーマを与え、調査・分析の手法やグラフの描き方などを教えてプレゼンテーションをさせる。そうすると「基礎知力」とマッキンゼー向きの「問題解決力」を兼ね備えている人材か否か、すぐにわかるのだ。
それが約40年前の話である。つまり、マッキンゼー日本支社は優秀な人材を獲得するために、かつての「就職協定」があった時代から、その埒外(らちがい)で勝手に採用活動を行なってきたのである。
ましてや21世紀の企業というのは、自社に必要な人材のスペックを作り、それに適合する人材を(サイバー上を含め)世界中から集めてこなければならない。日本で集められなかったら、集められる国に行かねばならない。
ところが、未だに日本企業はハンバーガー店やコンビニなどでマニュアルに従ったアルバイトの経験しかなく、ビジネスに必要なスキルは何も勉強していないような日本の大学新卒者を毎年一括採用している。これは企業にとっては自殺行為だ。
今のボーダレス経済の時代は、1人の天才が100人、1000人の雇用を生み出す時代である。だから欧米企業は採用に多大な時間をかけて一人一人の“物語”を問い、吟味に吟味を重ねている。また、インド工科大学(IIT)やインド経営大学院(IIM)には、優秀な人材を求めて米シリコンバレーの企業の採用担当者が殺到し、門前市をなす状態になっている。
※週刊ポスト2015年12月18日号