芸能

あさが来た 役者は適材適所だが「あさの鼻」には疑問符あり

 予想以上の反響を得ている朝ドラ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 NHK朝ドラ『あさが来た』が始まって2ヶ月超、トンデモないブレイクぶり。『花子とアン』の最高視聴率25.9%、『あまちゃん』27.0%を超え、『ごちそうさん』の27.3%をいつ超えるか、と大注目されているさなか。

 成功の理由はさまざま。幕末を女性の主人公で描いたのがよかった、役者の演技に破綻がない、などいろいろあるが、敢えて秀逸な点を3つあげるとすれば……。

●その1──適材適所適役

 日本のドラマはどうしても派手な筋立て、唐突な事件や出来事に寄りかかる傾向がある。そんな中、『あさが来た』はありそうで無かったエアポケットにすっぽりとはまった。

 あらかじめ結論を決めておいて、そこへ持って行くために強引に話を作ることを「ためにする」と言う。けれど、このドラマはそうした不自然さや強引さを感じさせないところが魅力だ。 

 登場人物一人一人はそれぞれ個性的。役者も適材適所。しかし妙に騒いで目ざわりな人物といったものは皆無。両替商・加野屋の日常の中で、一人一人が自分の仕事と役割を担い、それによって全体が回っていく。成熟した心地よさ、落ち着いた雰囲気が、視聴者のツボにはまったのかもしれない。 

●その2──心地よいテンポ

「ためにする」強引さは無いけれど、社会や人との関係の中で次々に変化が起こる。それに一つ一つ対応していくから、ドラマとしてちっとも退屈ではない。展開はサクサクしていてテンポ良く、現代の生活速度とぴったり。

 とは言っても端折っているわけではなく描写は細部まで丁寧。場面も京都、大阪、筑豊、和歌山といくつもの場を組み合わせ飽きさせない工夫が。

●その3──時代と文化へのリスペクト

 シーンが変わるたびに衣装替え。日に30~50回の着付けをするという衣装スタッフ。たった数秒間の映像の中に、季節感やしつらいの演出が心憎いほど生きている。

 例えば、新次郎の父・正吉を演じる近藤正臣は、大阪商人のしぐさに通底している役者。それだけに新次郎役の玉木宏に対して、畳での座り方や羽織の扱い方を教えたりと、周囲に好影響を与えている。細かい所作が、加野屋の仕事をよりリアルで美しいものにする。ドラマファンは、微細なところがしっかりと作ってあると感動してしまう。

 と、正直誉めたくなる一方。

 でも残念な点が無いわけではない。出来の良いドラマだからこそ、敢えて注文点を3つあげるとすると……。

●その1──あさの「鼻まわり」に疑問符

 炭坑でのあさは、いつも鼻の上が炭で黒くなっている。やりすぎ感あり。つわりだからと鼻にミカンの皮を当てて布でぐるぐる巻き。これってコントでしょうか? 安来節のどじょうすくいのパロディ? 「ほら笑え」と押しつけられているみたい。「思わずくすっと笑ってしまう面白さ」とは、そうした子どもじみた演出とはちょっと違うのでは?

 妙にバタバタしなくても、波瑠ならばセリフや目線、手のしぐさといった演技そのもので十分に、天然系の滑稽さ、かわいらしさを表現できるはず。そのあたりがちょっと残念。

関連記事

トピックス

水原一平氏のSNS周りでは1人の少女に注目が集まる(時事通信フォト)
水原一平氏とインフルエンサー少女 “副業のアンバサダー”が「ベンチ入り」「大谷翔平のホームランボールをゲット」の謎、SNS投稿は削除済
週刊ポスト
解散を発表した尼神インター(時事通信フォト)
《尼神インター解散の背景》「時間の問題だった」20キロ減ダイエットで“美容”に心酔の誠子、お笑いに熱心な渚との“埋まらなかった溝”
NEWSポストセブン
水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
富田靖子
富田靖子、ダンサー夫との離婚を発表 3年も隠していた背景にあったのは「母親役のイメージ」影響への不安か
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
カンニング竹山、前を向くきっかけとなった木梨憲武の助言「すべてを遊べ、仕事も遊びにするんだ」
女性セブン
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン