スポーツ

名調教師・角居勝彦氏 「良血馬」を預かる責任と重圧

 最高の血統を背負う競走馬の育成には、並々ならぬ苦労がある。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、良血馬を預かることについてお届けする。

 * * *
 おかげさまで角居厩舎はこれまで「良血馬」を何頭も預からせていただいています。

 母が年度代表馬にもなったエアグルーヴ、父がダービー馬キングカメハメハ、半姉はエリザベス女王杯を連覇したアドマイヤグルーヴというルーラーシップは、まさに良血馬の中の良血馬でした。1歳の頃から他を圧倒するオーラがあり、人が近寄ってきても知らんぷり。悠然と周囲を眺めていました。

 ただ管理にはプレッシャーがかかります。具体的にはクラシックにエントリーすること、そしてGIのタイトルを獲ること、さらに立派な種牡馬に育てること。調教師としての義務と責任です。周囲の期待も最大級で、しんどかった。

 2009年12月のデビュー戦は単勝オッズ1.5倍。期待に応えて快勝しましたが、若駒Sでは2着。次の条件戦では圧勝しますが、毎日杯では5着に敗れ皐月賞には出られませんでした。

 エイシンフラッシュ、ローズキングダム、ダノンシャンティ、ヒルノダムールなど同世代に強い馬が多く、同厩にも皐月賞馬ヴィクトワールピサがいました。ダービーには出走させたくてトライアルはプリンシパルSを選択し圧勝。本番では5着でしたが、なんとか晴れ舞台で走らせることができました。

 古馬になって最初に選んだレースが1月の日経新春杯でした。3歳時に先着された馬を一蹴し、ビッグタイトルも視野に入ってきました。その後も翌年のAJC杯などGIIは勝つのですが、GIのタイトルに手が届かない。せこせこしたところがなく、そのせいでもないのでしょうが「出遅れ」グセが響くことがありました。

 こういう馬は騎手を替えて様子を見ます。馬を強く追える騎手ほど後方に座る傾向があるので、タイプを替えることで馬のクセを見抜こうとしたのです。それで騎手の起用も固定しなかった。ただ、ルーラーに乗った5人の外国人騎手全員が「この馬は絶対に走る」と言ってくれました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン