また、韓国の高齢者貧困率は48%で、OECD(経済協力開発機構)加盟国中トップ。高齢者の自殺率も10年連続で1位となっている。若者の失業率も跳ね上がっており、若者の間では現代韓国を自嘲する「ヘル(地獄)朝鮮」という言葉が飛び交っている。

 韓国経済失速の日本への影響について、たとえばサムスンが凋落したら大変なことになるとの指摘も少なくない。

 だが、日本の資本財メーカーはサムスンがダメになっても自国や中国など他の国の企業に売ればいいだけの話。エレクトロニクスや自動車などライバル関係である企業は、韓国の財閥企業の凋落はかえって世界市場でのシェア奪還の好機でもある。

 現在、世界経済は「スロートレード」と呼ばれる時代を迎えている。世界のGDP成長率を貿易成長率が下回る現象である。輸出依存の経済成長が困難なのが世界の現実だ。

 韓国のようなグローバリズムに依存した経済はもはや成立しえないことを認識し、日本はスロートレードの中でどう生きていくかを考えなくてはならない。韓国を反面教師として、グローバリズムの優等生として韓国がやってきたような政策はすべて否定することから始めるべきだ。

 それにもかかわらず、いまの安倍政権はTPP参加による自由貿易の拡大で、韓国が辿ったのと同じ道を邁進しようとしている。もはや外需をあてにするのは止め、所得を上げて国民を豊かにし、国民の「購買力=内需」によって成長していくしか道はないはずである。

●三橋貴明(みはし・たかあき)/1969年熊本県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒業。NEC、日本IBMなどを経て2008年に中小企業診断士として独立。著書多数。近著『中国崩壊後の世界』(小学館新書)が話題。

※SAPIO2015年2月号

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