国内

甘利氏賄賂告発に自民議員「まさに悪代官と越後屋の世界」

 1月29日、甘利明氏がTPP担当相を辞任した。辞任のきっかけとなった週刊文春での賄賂提供告発は、一色武氏という1人の男性による実名告発だった。取材を進めていく過程で、一色氏には今回の告発以外にも、神奈川県議や千葉県議に対し「告発未遂」などの過去があることがわかった。『週刊ポスト』ではこうした一連の行為について一色氏の話を聞こうとしたが、自宅は不在、携帯電話にも出ない。

 週刊文春の告発によれば一色氏が「総務担当者」をつとめるという薩摩興業株式会社側に取材すると、取締役の1人は、「お断わりする」という回答だった。

 今回の疑惑の当事者となった甘利氏は会見で、現金は受け取ったものの秘書に適切に処理するよう指示したと説明した上で、「私の政治家としての生き様に反する」と潔い辞任を強調、政権のダメージを最小限に抑えるように努めた。それに先立ち、政権は甘利擁護の情報をリークしていた。
 
 その時点で大メディアは政権の情報操作に乗せられ、

〈「わなを仕掛けられた」……政府・自民 擁護の声も〉(読売新聞1月24日付)
〈「甘利さんはハメられたのかも……」TPP控え擁護〉(産経新聞大阪朝刊1月27日付)

 と、いかにも告発者の一色氏が大悪党で、甘利氏が被害者であるかのような報道一色になっていた。

 しかし、録音や写真で相手を揺さぶり、利益を得ようとした一色氏の行動は「しょせんは小者の事件屋の手口」(捜査関係者)でしかない。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこういう。

「この件で自民党の若手議員に話を聞くと、『こんなこと、まだやってるんですね』と呆れている。ある議員は『まさに悪代官と越後屋の世界だ』と。秘書の問題だとしても、秘書に任せていたことが政治家の緩さを如実に表わしている」

 役所に強い発言力を持つ大物大臣や自民党実力者の周囲には「口利き」を期待して筋の悪い輩が集まってくることもある。そんな連中から喜々としてカネを受け取り、役所に陳情を取り次いでおきながら、いざ掌を返されると政権・与党をあげて「罠に嵌められた」「ひっかかった」と被害者顔で泣き言をいい、大メディアまでそれを垂れ流す。

 小悪党の告発常習者1人に安倍政権が丸ごと手玉に取られ、狼狽して危機管理能力のなさを見せつけたことが、今回の事件の最大のスキャンダルなのだ。

※週刊ポスト2016年2月12日号

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン