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ニカラグアで12年の獄中生活を送った日本人の告白(1/4)

 ギャンググループは「上納金」として一般囚人の食糧を奪ったり、タブレットと呼ばれるオセロのようなゲームで賭場を開帳したりする。そのようなギャングに敵対することは命の危険をともない、また無視することも許されない。スペイン語を一切話せなかった服部氏は当初、雑居房の中のすべての囚人から距離をとり、配給されるわずかなガジョピントだけを支えに、救出のときを待つつもりだったが、ギャングはそのような態度さえも許しはしなかった。

「ひどく気分が塞ぎこんでいましたので、ともかく波風を立てず、静かに時間が経つのを待とうと思っていましたが……、ある朝、太腿に変な痛みを感じて目を覚ますと、長い真っ赤な切傷ができていました。ギョッとして周囲を見回すと、すこし離れたベッドにたむろし、雑居房の中には無いはずの『氷入りのファンタオレンジ』を美味そうに飲んでいるギャングたちと目が合いました。彼らはジロリと私を見て、右手の親指を両目に向けて横に振りました――寝ている間に、次は両目を切り裂くぞ、という脅しです。

 彼らは、鉛筆に剃刀の刃を埋め込んだものや、金属製のパイプベッドの脚を削るなどして自家製の武器を所持しています。私のような独りきりの外国人や、食糧や煙草を持って挨拶に来なかった囚人など、彼らの気に食わない囚人が寝ている間に身体の一部を傷つけ、私にしたのと同じように、次は両目や頸動脈を切ると脅すのです」

 不気味な脅迫を受けた囚人たちは刑務官に訴えることもできず――密告すれば酷いリンチが待っている――眠ることを恐れるようになり、何日も徹夜を続けたあげく半狂乱になったり、ギャンググループの門下に入ることになってしまったそうだが、服部氏は違った。

「私はスペイン語もまったく分からないですし、そもそも収監された理由自体、まったく身に覚えのない罪状だったので、太腿を切られる前から、すでに絶望的な状況でした。だから、両目を切られると脅されても――まったく怖くないわけではありませんが――すこし投げやりになっていたこともあって、恐怖に震えるというよりは『なるようになれ』というような気分で、普通に寝てしまっていたんです。そうしたら、そんな態度が逆に、ギャングの興味をひいたようで、しばらく経つと、そのグループから嫌がらせを受けることはなくなりました」

 服部氏の語るニカラグアの刑務所の実情には驚かされるばかりだが、そもそも、彼はなぜ、約12年間も収監されることになってしまったのだろうか。(5日16時配信の2/4に続く)

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