そんな高知球団にラシィナ選手がやってきたのは2013年6月。ブルキナファソで野球を教えていた日本人の青年海外協力隊員の支援で、高知球団の練習に参加。1か月後に行われた入団テストは不合格だったが、「日本でプロ野球選手になりたい」という熱意が認められ、練習生として球団に加入した。

 野球に必要な単語を少しずつ習得しながら、毎日約8時間にも及ぶ練習に励んだ。佐川町にある寮では捕手の浅野祥男選手と同部屋。「浅野サンが料理係で、僕は洗い物係です。浅野サンが作るカレーと味噌スープ、とってもおいしいです」。体重は来日当初より11キロ増えて77キロになった。今では通訳なしでインタビューを受けられるほど日本語がペラペラだ。
 
 ラシィナ選手の初試合は2015年6月20日。当時、米メジャーリーグのテキサス・レンジャーズから移籍したばかりの藤川球児投手(現・阪神タイガース)が故郷・高知で初登板したオープン戦だった。8番・サードで先発したラシィナ選手は、2回にまわってきた初打席で、見事なセンター前ヒット。彼の成長を見守ってきた越知町や佐川町のおじいちゃんやおばあちゃんは、涙を流して喜んだという。
 
 その後、同年8月25日に正式な選手として認められ、17歳にしてブルキナファソ初のプロ野球選手となった。その後、9月2日に公式戦デビューを果たし、全4試合に出場するもヒットは打てず、公式戦初安打は来季にお預けとなった。喜瀬氏はこう語る。

「小学生の頃から野球をやってきた同年代の高校球児に比べて、ラシィナ選手はまだ基礎的な技術や経験が足りない。しかし身体能力は飛び抜けているので、元プロ野球選手の監督やコーチの指導を受けてトレーニングを続ければ、NPB(日本プロ野球機構)でプレーすることも夢ではありません」
 
 高知ファイティングドックスには、今年から総監督に“エモヤン”こと江本孟紀氏(元阪神)、監督にかつて“満塁男”の異名をとった駒田徳広氏(元巨人、横浜)が就任。元スター選手の指導を直接受けられる絶好の環境に恵まれた。
 
 ビニールハウス内でスペアミント摘みを手伝うラシィナ選手に聞いた。将来はNPBのどの球団でプレーしたい?

「どの球団でもかまいませんが、好きな球団は福岡ソフトバンクホークスです。NPB入りして活躍し、将来はブルキナファソで野球の発展に貢献したいです」

 夢の実現はそう遠くなさそうだ。

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